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スレッドNo.4045

緑の聖地  人と庸

 建物ばかりのまちの中に
 緑がこんもりと繁っている一角がある
 そういうところは
 神聖な場所であったりする

ひさしぶりにここへきた
前にきたときよりも
緑のにおいが濃くなっている

最後にきたときは
まだ透きとおるような若葉色だった
ここの楓や楠たちは
今日はことさらにしずかだ

以前は仕事に行くまえに必ずここに立ち寄った

 職場の人たちの視線
 いや 視線は向けられていない
 向けられていないのに
 つき刺さる

 わたしの目は半分の大きさになった
 まぶたでいろんなものを隠すから

心の水面(みなも)を鎮めるために
神さまに手を合わせ
緑に向かって深呼吸をし
ここで禅語の本を読んだ
(神さまは許してくださるだろう)

今はそれらをしていない
自分の中の形のないものを
だれにでも認識できる形にする
そんな試みをはじめたから

水面がふるえて 波立って
何かがポチャリとこぼれると
白い平原に ことばという花がひらく
そんな気がするから

わたしがここにくるのは
今はもっぱら家族のためだ
今日はむすこの修学旅行の安全を
(「困ったときの〜」もたいがいにせよとおっしゃっているだろうか)

お詣りを終えたとき
木々のどこかで 鳥がないた

「鳥啼(な)いて山更(さら)に幽(しずか)なり」✽

わたしの中の水面がふるえた



✽禅の言葉
(六世紀前半の詩人•王籍の五言古詩の一節「蝉噪林逾静(せみさわいではやしいよいよしずか) 鳥啼山更幽」より)

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