シマ 理蝶
シマがこちらを見とる
シマはおれと同じくらいの力だ
シマが来て体が重くなった
正直言うておれはもうやられるかと思った
シマは窓から ずっとこちらを見とる
シマが一度来て 一旦帰って
また夜に来た
シマがまだ帰らない
シマが!
○○さん、帰るよ
みんな待ちよるよ
うんうん これだけ言わせて
シマは 死神よ
そう言い残して
○○さんは送迎バスに乗った
ごめんね
あれは過去のトラウマとかが
彼の中で入り組んで
ああいうのを 見せているらしいんだ
職員さんは言った
シマ
嶋、島 あるいは 死魔
彼の視界にのみ
未だ刻印されている傷跡
彼の苦悩が凝結した
脳からの使者
ふと窓を振り返った
垂れ込める曇天と青葉 それだけ
僕にはまだ シマは来ない
けれど
すぐそばまで 来ているかもしれない
誰だってそう
僕だって あなただって
窓から
空と青葉だけが 見える日々は
まったく当たり前ではない
※ 本作は実話をもとにした作品です。そのため「シマ」という語を用いたことに、一切の他意はございませんのでどうかご了承ください。