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スレッドNo.4050

命の温もり  上田一眞

早朝 新聞受けのそばに
見知らぬ少女がひとり 蹲っていた

 おはよう
 どうしたの?

少女の小さな掌を覗き込むと
雀が一羽
手の中で ぐったりしている
身体に触れるとまだ温かい

羽毛が生え揃ったばかりの幼鳥 
風に煽られ
巣から落ちたか
はたまた 鴉どもにやられたか

雀が チチっと啼いて眼を瞑る
やがて
体内時計が針を止め
深い死の帷に包まれた

鳥の身体を指で囲っていた少女は
悲しげに私を見上げる

 せつないね 
 埋めてあげような

そう声をかけると
彼女はコクりとうなずいた 




冷たくなりゆく骸
命の残香を感じ
孤独な小鳥のしぐさでうなずく
少女
死を感得し
雀の黄泉路への旅立ちを悟る

命の温もりが消えたとき
少女の胸に
憐憫の火が熾り
その儚さを悲しむこころが芽生えた

清らかなこころから湧き出す
温かい涙が瞼を濡らす

少女の魂に転生する
雀の霊(たましい)
私は 一条の光を見て
少女の肩にそっと手を置いた

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