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スレッドNo.406

夏の日に  ゆき

ジュワッと音のしそうな夕焼けを背に
彼は前を歩いていた
湿ったタオルで首筋の汗を拭きながら

少し丸くなった背中と
重い足取りの影が
もう若くはないんだと寂しく感じる

一杯やるか の言葉に
頷いて付いていく

今日もいつものように
最初のビールが一番美味いと言うだろう

二杯目からは少し余裕が出てきて
今日も暑かったな と笑顔になる

ビールを焼酎に変えて
何度も乾杯をして
心地良く酔いがまわった頃

俺 会社を辞める事にした
今月いっぱいでな

焼酎の入ったグラスを撫でながら
真っ直ぐに僕の目を見て

お前なら大丈夫
やっていける
俺の分まで頑張れ

彼は苦笑いして
ごめんな と言った

それが彼との最後になった

あの夕方の重い影
あれは病人の影だった

身体中が悲鳴をあげてゆっくりと
魂と分離していく恐怖と
彼は闘っていたのだろう

何も知らなかった僕は
何も出来なかった事を
悔やんでいる

もっと一緒に呑みたかった
彼の話をもっと聞きたかった

大切な事は後で思い知らされる
焼けそうな夕焼けの下に
彼はもういない

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