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スレッドNo.4075

白い紙  温泉郷

白紙のファックスがまた届いた
届くときには
だいたい朝のこの時間
ファックスが届くと
取りに行くのはアルバイトの仕事だ

 ああ また
 あのじいさんか
 ほっとけ ほっとけ
 そこのファイルに綴じておけばいい

彼は白紙のファックスを手に取って
少し見つめて
いつものように
ファイルに綴じる
ファイルにそっとつぶやく

 ここじゃないよ
 ここじゃない

老人からの苦情の電話に
職員が決まり切った対応を繰り返しているうちに
電話がこなくなり
ファックスが届くようになった

ファイルに綴じるだけは綴じる
でも そのまま何もしない
そうするようになって
もうかなり経つ
着信拒否まではしない
電話がくると面倒だから

彼はいつものように
ファイルをめくってみる
最初のうちは
乱暴な文字が殴り書きされていた
右斜め上がりの文字が
叩きつけるように書かれていた
だんだん勢いがなくなり
言葉が減り
そして白紙に……

白紙のファックスは
孤独に覆われ
紙の色がだんだん弱く
透き通っていく

白い紙
白い顔

祖父を思い出す
怒ってばかりで
嫌いだった祖父を
最後の方は
何も言わなくなった祖父を

彼は 祈らずにはいられない

 もっと暖かいもので覆われるといいのに
 もっと優しいもので覆われるといいのに
 暖かいもので覆われた優しい色の手紙を
 ここではなく
 誰かに届けてくれるといいのに

わずかでもいいから
優しい言葉を添えて

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