煙は危ない 紫陽花
煙は危ない
遠い遠い昔話の中で浦島太郎は煙を浴びて鶴になってしまった
立ち込めた煙の中には何かが潜んでいる
きっと煙幕の中からは正体不明のものがでてくる
煙は不穏の象徴だ
煙と言うだけでも危ない
さて今日は消防訓練の日だ
放課後子供教室の1年生向けの訓練なので
9人の小学1年生がひとりずつ
順番に煙の部屋に入る予定だ
グレーの消防服を着た消防士さんが話始める
これからみんなに煙の部屋に入ってもらいます
今日は練習なので真っ白の煙は少し甘い
バニラの匂いを漂わせています
実際とは違いますが立ち込める煙の中
どれくらい前が見えるのか確認してください
煙は怖いですよ
本当の煙を吸うと頭が痛くなって倒れてしまいます
本当の煙には近づいてはいけません
消防士さんは真剣な顔で一人一人見渡しながら
ゆっくりと話し 誰から入りますかこの部屋にと聞く
ここで男の子1人が泣き出し先生がその場から離す
その泣き声が小さくなるのを確認しながら
また一人私怖いからお部屋に入りたくないと女の子
ただここで見ているという
残り7人が順番に煙の部屋に入る
布製の扉が開くとそこはもう真っ白
扉の横にいる消防士さんの手を握って
手の届くところまで入る そして出てくるを繰り返す
7人は案外楽しそうに何も見えないと
キャーキャー騒ぎながら訓練を終えた
入らなかった女の子も何故か一緒に騒いでいる
ほんの少し扉から見えた煙で恐怖を刷り込んだのだろう
離れたところにいた男の子は戻ってきたが
過呼吸気味になっている
今回は体育館に移動してもらった
誰よりも煙を吸ってしまったようだ
煙です 白いです 何も見えなくなります
本当の煙を吸うと死んでしまうこともあります
この言葉を吸い込んでしまって
結局男の子は帰るまで体育館に横になっていた
煙は本当に危ない