両手で「はい」と受け止める まるまる
一台のパソコン
左に私 右に後輩
特に急いではいないから
譲るね
退勤時刻
掃除を残せば誰かの仕事
一つだけでもして帰ろう
誰かのために が少し
性分だから が少し
後の残りは
いい人でいたい
帰り道は
ストレスいっぱい
皆みたいに帰りたかったな
掃除なんてしたくなかった
自分で進んでやったけど
根に持っていた 誰かのせい
今までたくさん
こんなこと
自分と自分のすれ違い
小さい頃に 少しだけ
手ほどきを受けた日本舞踊
毎年届く案内状
踊りに心はもう動かない
読むだけ読んで置いていた
何年も
何通も
もう出向かないと置いていた
今年も同じはずだったのに
心の舵は
予期せぬ方へ
チケットを買って 観に行こう
反射するようにそう決めた
お金は足りる
時間もある
呼ばれた
それなら行こう
来てほしい と投げられたボールを
はい と両手で受け止める心地よさ
私じゃない誰かの希望の叶うこと
見返りのためじゃなく
いい人でいるためじゃない
望みはひとつ 叶えてあげる
ごく稀に ふいに湧き出すこの気持ち
一歩私が下がったら
誰かにちょっといいことひとつ
折り重ねて積み上げるなら
知らず知らずに 毎日が豊かに
折り返し地点を過ぎた頃から
誰かが喜んでくれるのが
こんなに楽しいと 知った
好きになれない会社の掃除
晴れやかな気持ちで帰れるように
いつかはなれたら いいけど