光源 鯖詰缶太郎
肩で風以外のものも切ってきたのか
浅黄色と暗礁の中に沈むような紅が
四辻の中で
俺の弱音を待ち構えている
テトラポットに
二時間 佇んだ
深海のことに想像を巡らした
でもなにも思い浮かばない
深海はどうせ まっくらだ
深海はどうせ まっくらなのだと
またそのままにしている
本をもっと読まなければならない
身体をもっと鍛えなければならない
腹筋はわれて
はじめて腹筋なのだと思わなければならない
成功者の話をもっと聞かなければならない
四辻に 光を通す
あれが あんな 暗く卑しい目つきで
俺の欲望を見透かす あんなものが
ブラックホールのように光を通さない
絶望であってたまるか
生きたまま 行き止まりを
行き止まりだとも 気づかずに
おろおろするのが 人生であると
わりきろうと おもっていたのに
わりきれるほどの整合性を
本に見いだせなかったからか
腹筋もわれなかったからか
成功者の書いた本が
どこぞで読んだ自己啓発本と
内容がほぼ一緒だったからか
なにかが違うと思った
なにかが違うから
あの四辻に 光が通らないと
思い込んでいるこの苦悩も
ずっと間違えていたのではないかと
そう思った
そう思えた
本当にそうなのだろうかと
まだ疑っているけど
そう思いたいと
今度こそ 四辻を 真っ直ぐに みつめた