水面月 司 龍之介
立ち止まって
後ろを振り返る
それはでこぼこ道で
人の気配がする
一人で歩いてきたつもりはないが
今となっては孤独にもなりきれず
寂しさはもはや空想の世界
孤独を知る人よ
あなたは今幸せか
そうである事を信じてる
昨日は激しい雨が降って
外の世界が騒がしかった
あの一匹の野良猫は無事だったろうか
俺の歩いた道に降った雨は
希望を隠し幸せを隠し
あたかも世の中は不幸に満ち溢れていると
そう思わせるのだった
しかし永遠の雨などなかった
長く思わせた土砂降りの雨は
いつしか小雨になり
そして雲は王座を明け渡し
昼には太陽が微笑み
夜になり星は瞬いた
俺は立ち止まって
後ろを振り返った
そこには無数の水たまりに映る
無数に輝く水面月