感想と評① 7/29~8/1 ご投稿分 三浦志郎 8/5
すみません。スケジュールの都合で、お先に書かせて頂きます。
1 鵬鵬さん 「戦争」 7/29 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
よろしくお願い致します。僕にとって初めてですので、オリジナルの風味は尊重する、という前提で書かせてもらうと、横書きベースで言うと、縦運動の詩行を考慮されてもいいでしょう。
さて、内容です。二つの話のポイントがあります。祖父のこと。母の弟(僕の叔父)のこと。
終行は、締め括りとしては、ちょっと弱いのです。ここを削って―祖父さんには、ちょっとごめんなさいですが―母の弟、僕の叔父の“なるはずだった”部分に比重を置いて、追加詩行を設けると、より内容濃く説得力が増すように思えました。また書いてみてください。
2 妻咲邦香さん 「海亀」 7/30
タイトルをひとつのチャートとして、頼りにしながら読んでいくわけですが、全くわかりませんね。
海亀にちなんだフレーズとしては「砂浜~帰っていく~海~竜宮城~いい子」などが浮かびますが、
複雑な配線をひとつずつ繋げて作品に電気を流せるのは作者一人でしょうね。ただ、終連を読むと夢だったとわかる。海亀の夢を見た、ということでしょうか?ただし3連目の抒情性は好きですね。
僕個人としては妻咲さんの、こういうわからなさは嫌いではないんですが、当サイトのフレーム内にいる為には、少し変針やアレンジが必要かもしれません。“妻咲さん内わからなさ度・ぶっ飛び度的”には、甘め佳作でしょう。
3 cofumiさん 「手漕ぎボート」 7/30
なかなかいいですね。佳作。明らかな擬人法を使ってるんですが、それの持つ臭みのようなもの―“いやらし感、いかにも感”―とかが、あまり感じられないのが、一番いいんです。ヘンな言い方をすれば、周りの詩行が、寄ってたかって、その臭みを消しにかかっている。つまり周辺詩行の能力の高さを感じるわけです。とにかく美しい描写が続くのです。じっくり書いて来たその結果が実った終連の佇まいです。だいぶ古びて草臥れたボートなのでしょう。やがて廃棄されるのか?「ならば、一期の佳き思い出に」の最終行。その静かな意志。
アフターアワーズ。
「最後に手漕ぎボートに乗ったのはいつだっだろ?」―この詩のように「いつかの若い二人」だった頃かもしれない。
そんなことも思い出させる詩。
4 麻月更紗さん 「足踏み」 7/30
個人事情を含めて、大変興味深く共感的に読みました。偶然を前提に書くと、僕もこういった背景を長編詩で設定したことがあったからです。僕の場合はリアル描写でしたが、こちらは比喩世界の中で活性化している点に注目すべきです。風景が目立ちますが、実はこの詩は心のありよう。日常で、何か行動的心情的に堂々巡りするような出来事があったのでしょう。しかも描かれた事物がなかなか美しいだけに、自分の行動や気持ちがよけい惨めさを増すような雰囲気がありそうです。実風景を上手く扱ったことによって、自然に心象風景も同時浮上した好例のように思えるのです。佳作を。
5 エイジさん 「夏に溺れ死にしそう」 7/30
やや異例に感じたのは、エイジさんがフレーズタイトルを採用したことです。歓迎できます。
こういう感じ、たまにあるといいですね。 この詩、まずは、おつかれさま、でございます。
メイン風景としての坂~階段。アクセントになるトンネル、バス停、陸橋、商店街。これらが上手くミックスされて、読み手それぞれに風景を想像できるヒントが提供されています。ミックスと言えば、叙景と心情も配置、バランスが良く考えられていますね。心情はセリフ的、呟き的です。生活のリアルを感じました。このあたりの事情から、読み手は「おつかれさまです」と思うのです。今回は評価は控えておきましょう。
アフターアワーズ。
駅から病院まで、ストリートビューでも見るように辿っていました。すごい所にある病院ですね。
この苦労は充分察せられます。そう、マスクも濡れますよ。
6 荻座利守さん 「人は偉大であるということ」 7/31
これは論理一発の詩です。こういう種類の詩は多くの共感を得るに越したことはないのですが、必ずしもそうでない場合も、ままあります。手続き上、仮にこの詩が以下のような数字だったとします。
共感……70% 理解不足、誤解、反論……30% (仮に…ですよ)
まず、この詩の設問であり第一の関所は4連です。それ以降が解答であり次々の関所になるでしょう。ところで、僕にとっての上記30%とは「死者に憶われる~」なんです。これをどう見るか?
まあ、僕なりにその関所を通過する手がかりはあって、以下の言葉です。
「死者にその力を/与えられている」―ここの理解の仕方です。
「過去の先人=死者」の発明、発見、努力というレールに乗って、その恩恵に与って、我々は今を生きている。それは各種機器であり伝統であり慣習でしょう。文明がそのようであり、その連続性が維持される限り、人は偉大でいられる。そんな解釈です。佳作を。けっして広くないスペースで上手く納めましたね。
つづく。