帰っていく者 向かっていく者 晶子
いつかは空に帰っていくと
人々は言う
まるで青空の先に
帰るべき故郷があるかのように
いっさいのものが解けて消えて一つとなる
誠の空
かたや
今
一つの志が
同じ空に向かって高く頭を上げている
人々の叡智を結集した宇宙ロケットが
己の向かうべき蒼穹に
その先の真空の宇宙に
まっすぐな視線を向けて
人は消え
文明は消え
辿り着くのは
同じ空なのかも知れない
それでも
今
ロケットは地を振り解き
無遠慮に空を裂き
身を切り離しながら
仏神の世界のその先に
罰当たりといわれようが
祈りながら
虚空に何かを掴みにいく
私たちの孤独をそのまま抱えて
蒼穹に放たれた
一本の白羽の矢