感想と評② 7/29~8/1 ご投稿分 三浦志郎 8/5
7 朝霧綾めさん 「ダイヤル錠」 7/31
「ウチは鍵なんか掛けたことない」―ひと昔前、地方の親密な地域社会でたまに聞かれたけど、この詩はその反対の話。なかなか目のつけどころがいいですね。
僕は錠付きの鞄持ったことがなくて(そもそも旅しないし)、そのあたり疎いのですが、ごく普通に施錠するのではないでしょうか。外国ならなおのこと。自己責任って言葉も流行り過ぎるほど流行ってるし。ごく当たり前で、そう深くは考えないのが今。そういったご時世に、こういう人情の廃れを嘆く朝霧さんの優しさに、逆に新鮮に注目してしまうのです。「この子」は違和感。削除でいいですね。
厳めしく人を寄せ付けずに
立っているのが役目だから でいいでしょう。 甘め佳作で。
8 ゆきさん 「破片」 8/1
まず初連~2連で、思春期~反抗期を迎えた「僕」が想像されます。3~4連は冒険というか、今までとは違った行動・生き方への比喩でしょう。やや不思議なのは5連なんです。親の考え方とはちょっと違うような。予定調和的な流れから少し外れるように思えて、僕は違和感を覚えました。
箱庭的に形にはめたい母。その呪縛から自由でありたい「僕」。その摩擦の中で働きかけようとする心情は当然であり、「僕」が正解であることは間違いないです。こういう親って案外いるのかもしれない。鳥籠の鳥、空を目指す。そんなイメージを持って読みました。僕としては5連の持つ不自然さが少し気になって、佳作一歩前を。
9 ふわり座さん 「power to move」 8/1 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
よろしくお願い致します。外れるケースも、ままあるんですが、僕はお若い作者さんという気はしました。僕はすでに老人の入り口に立つ者で、こういう詩はもう書かない、というか、書けないのです。こういったことをうやむやにして生きて来た僕です。それに対して、この詩の健気さを思います。書き方として”大上段を上手く言語化“しているな、という印象を感じました。やや抽象的な表現が多いながら、伝意性、共感性はけっこう含んでいると思えるのです。
「努力や才能、経験を持ってしても/成功できないこの世界」―残念ながらその通りです。
が、次を読みましょう。「存在する理由が/必ずあるはず。それこそが僕の希望だ。何事にも変え難いそれが僕を突き動かしている」―此処こそがこの詩の存在価値であります。僕こそが学んでおきたい部分。別の言い方をすると、上記の事を微調整、折り合い付けながら生きるのが、大人であり老人の謂いかもしれません。「僕は忘れない~」以降も上記中盤連と双璧を成す連となっています。タイトルも回収し得る。これら、気づきさえあれば、何の心配もないでしょう。いい詩でした。また書いてみてください。
10 北目気球さん 「煤煙童子」 8/1 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
よろしくお願い致します。深入りする必要はないのですが、ロンドン~イギリスの炭鉱事情は軽くさらっておかないと味わえないでしょう。そのようにしました。書き手サイドに思いを巡らすと、豊富な知識の上でないと、こうは書けないことを感じました。ここでは、ブルジョアの繁栄と享楽との対比の中で、社会の下層、例としての炭鉱が取り上げられ、その過酷が描かれます。過酷ではあるが、生活の為、それにしがみつく人々のありようを感じました。文体ですが、文語調を採用されてますが、テーマ、時代性からの事と思われますが、ここは評価の分かれる部分があるかもしれません。また書いてみてください。
アフターアワーズ。
すでに斜陽産業であること、国による閉山の動き、それに反発する人々の争議。それらを援用的に読むと、さらに意義深いと思われました。
11 もりた りのさん 「朝顔のつぼみに」 8/1
これは異色作?今までとガラッと違う。まあ、あらゆるスタイルに対応可能といったところでしょうか?朝顔は小学生の理科や夏休みの自由研究に好適な花ですね。語り口にそんなイメージを持ちました。僕は花について素人ないし初心者ですが、その僕をもってしても、この詩の状態で花が咲くとは到底思えない。しかし、その「咲かない」こそが、この詩のポイントと思えるほどです。
すなわち「叶わないからこそ咲いてほしい」―叶わぬ願いの少女的なありようでしょうか。当然のように、その地に落ちたつぼみを助けてあげたいという子どもらしい健気さもあるでしょう。この両者の存在が、もりたさんの表出した詩の深度と思われます。あるいは、せめて希望で飾ってやりたい、そんなレクイエムかもしれない。この詩の優しさに佳作を。
評のおわりに。
さて、8月。この盛りだくさんに暑い中、自分にとって盛りだくさんのメニューあり。
詩人会賞決定(みんなで決めるんですけどね)、朗読会、詩画展のお世話。
さて、その朗読会、お世話しながら自分でも読むハメになった。
朗読はほぼ初めて。(ハジはかきたくない、でも少しはウケも狙いたい!)
ワードからサウンドへ。まあ、音楽のようなもんでしょ!?そ、そうだ、練習だ! では、また。