あなたと僕 相野零次
あなたと僕は共にいられない
それはわかりきったことだ
空には僕がいる
晴天の日は泳いでいる
あなたは夜の闇に隠されている
僕が呼ぶと返事はするが
姿は見えない
僕は雨の中を手探りで掻き分ける
あなたの名を呼びながら
あなたの名がなんて名だったのか
思い出すことはできない
あなたは少し悲しそうだ
僕の思い出にいつもあなたはいる
あなたの声が聴こえ
影が見える
あなたの実体は僕には届かない
あなたはとても美しい
のが僕にはわかる
あなたが僕を愛しているのが
僕にはわかる
けれど僕はあなたを愛してはいない
愛でているだけである
僕とあなたの関係は
いつから始まったのだろう
あなたが僕を見つけ
僕に呼びかけ
僕はその声に応じた
あなたは僕にとっての運命の人だ
まだ出会ってはいないが
それだけはわかる
あなたは花の匂いがする
あなたの匂いに包まれると
僕は幸せだ
僕の匂いはあなたにはわからない
僕の姿はあなたには見える
あなたの姿は僕には見えない
そうして僕に感じれないことが
あなたには感じ取れる
僕に感じ取れるあなたについてのこと
その全てが僕にとって
限りなく愛おしい
あなたがどこにいるのか
僕は知らない
けれど僕はそれで幸せだ
あなたはそれが寂しいかもしれない
あなたを愛しているのかどうか
僕によくわからない
あなたは僕を愛していると
はっきり告げた
僕とあなたが出会えない理由は
そこにあるのかもしれない
出会わなければよかったと
思うかもしれない
だから
あなたと出会いたくはない
このままの関係が望ましい
それがあなたは少し哀しい
あなたに告げる
僕の歌を聴かせる
僕の悩みを打ち明ける
あなたは全てを聞き入れてくれる
あなたは僕にとって
理想の母親のような人だ
あなたは僕を恋人にしたいらしい
そういう目で僕はあなたを見れない
だからやっぱり
僕とあなたは出会わないほうがいい
あなたはたぶん今死んでいて
だから僕は生きている
僕が死ぬときがあなたが生きるときだ
それがあなたはやっぱり悲しい
僕とあなたの関係は
どう定義できるのだろう
あなたはいつも僕を見つめている
僕はいつもあなたを聴いている
そうして世界は僕とあなたを受け入れている
世界が僕とあなたの関係を許すとき
僕とあなたは本当の意味で一緒になれるだろう
そんなわずかな希望を胸に
僕とあなたは存在し続けるのだろう
今日も明日も明後日もずっと