三浦志郎様 評のお礼です 上田一眞
こんにちは。上田です。
いつもながら鋭い観察力、凄いです。
確かに瘋癲病院で聴いた音は文字に表すことが出来ないような声でした。それをあのような表現にしたのは、50年後に精神病院で聴いたものを同じと推定して持って来たのです。ですから正確には幼い頃聴いた声とは違います。
少し状況を説明いたします。
幼い頃、母の実家に行くとき、岩徳線の駅で降りて、約二キロの道のりがありました。途中国道二号線(旧山陽道)の峠越えの道を歩くと、小さな平屋の黒い病院がありました。瘋癲病院です。看護婦だった母の学友が勤めていたそうです。ぼくは薄気味悪くてそばを通るのが嫌でした。いつもお経を読むような声がしたからです。文字にならない言葉です。
長じて、精神病院にお世話になったとき、僕は入院はしませんでしたが、担当医の診察室が、入院患者棟にあって、入る機会があったのです。鍵がかけてあり、外来は普通入れません。
病棟入口に事務室があり側には大部屋があって、見張りの必要な患者が常時四〜五名いましたね。彼らは統合失調症の患者で壁に向かって話しかけたり、意味不明の言葉を発していた、そういう状況でした。
もう十年以上前のことですが、流石に忘れられません。本作ではこの声の部分だけがフィクションです。そのように説明が必要でした。失礼しました。