恋文(中原中也に憧れて) 喜太郎
休み時間になると
君は日の当たる窓辺の席で
一冊の本を取り出し読んでいる
明るすぎる髪色
少し濃いめのお化粧
ピアスにドキドキするほど短いスカート
前の席の友達に話しかけられれば
静かに本を閉じて会話で大声で笑う
やがて友達と同じように
取り出した携帯の画面をテキパキと操作する
あの文字を追う物静かなギャップの中の目線の君を
ずっと見ていたいのに邪魔されたようでため息が出た
次の休み時間
君の机の上に置かれた本
好奇心が足早に机の横を通り目をやる
『詩集』?………『中原中也』?
やがて僕の携帯の検索履歴はこの二つで埋められ
暇な放課後は図書館に通うようになった
君との接点が作りたくて
君と同じ考えや思いを共有したくて
訳もわからず読んでみた
そして今 僕は詩を書いている
君へ宛てた恋文の詩
この想いを『サーカス』の空中ブランコの様に
上手く音と文字に表せないものかと思考を巡らせ
書いては消して 消しては書いて
やがてペンを置いて
目を閉じて窓辺で本を読む
君の上下にゆったりと動く眼差しを思い浮かべる
まさに今の僕の心は空中ブランコ
ゆあーん ゆよーん はやゆあーんの様だ