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スレッドNo.4145

ぼくが死んだ朝  理蝶

ぼくが死んだ朝には
かるく雨が降って 
燕がせわしく餌を探すだろう

ぼくが死んだ朝には
誰かが傘をわすれて
整えた髪を崩してしまうだろう

ぼくが死んだ朝には
太陽のぜんまいが巻かれて
空へただしく昇ってゆくだろう

何も変わらないさ それでいいんだ
宇宙に産まれたすべては
かけがえのない軌道と輪廻を与えられて 
この世に産まれ落ち 
気づかぬ内に淡々と その上を生きてゆく

みんな辿っているんだ 
神様のチョークで描かれたその線を

みんな巡っているんだ
神様のコンパスで描かれたその円を

ぼくが死んでも 
何も変わらないよ 
困ることなんて何にもないよ
それでいいんだ 

でもね

代用品だらけの このぼくを
労わってくれる 優しい人が
もしいるのなら

ねえ 少し泣いてくれないか
ねえ 空を見上げてくれないか
ぼくがいないという 
ただそれだけの理由で

時にさみしく
時にむなしくなりながら
それぞれの線を 
ひたむきに辿った日々に免じて

どうか
この世界を少しも変えることのない
ひそやかな涙を 流してくれないか

せめて
次の代わりが来るまでの一瞬を
うつむき加減に 暮らしてくれないか

ぼくが死んだ朝には
かるく雨が降って
雛は旺盛に食べるだろう

ぼくが死んだ朝には
うすい雲を割って
陽が差し込んでくるだろう

ぼくが死んだ朝には
目を腫らした人が居て
そこに生きた証を見るだろう

ぼくは はにかんで
空の階段へ足をかけるだろう

編集・削除(編集済: 2024年06月25日 23:53)

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