唐辛子と光トカゲのうた 荒木章太郎
毎日仕事終わりは
激辛中華そばを
唐辛子で赤く染める
赤く爛れる痛みで
長い人生の中の一日を朦朧とさせ
二つの乳房の谷間
真赤な太陽沈めるだけよ
汗と涙が噴き出して
怒りと悲しみ流れ出る
痛みが味覚に変わる快感
なんて綺麗な夕焼けかしら
我慢が美徳とされる時代に
生まれていたなら
この町では表彰者だ
圧倒的な絶望のもと
痛み傷つき跪く
私の皮膚は血の滲む努力で
この人格を守ってきたのだ
スープを飲み干した頃
店の壁には光トカゲがいた
鏡の皮で迷彩し
長いしっぽに透き通る体
光と影を行き来する
切ったしっぽは流れ星
トカゲと私は似たもの同士
私の場合はしっぽがないから
背骨を切って行き来する