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スレッドNo.4202

羽蟻   秋乃 夕陽

和室から見える景色は
まさに夏そのものを現している
水色に薄められた絵の具に
白を淡く馴染むように付け足した
そんな背景
伸びる焦茶の自由な線に
緑は白く光り
ときおり吹く生暖かな息に
気持ちよさそうに体を揺らす
開け放した窓の網戸の端に
一匹の羽蟻がウロウロと彷徨い歩き
まるで木々と木々との間を渡りながら
空中浮遊しているようだ

どこからともなくじっとりと
浮き出る汗を拭いながら
私も以前羽蟻のように
行きつけではない銀行へ
たまたま行く途中で道に迷い
畑と住宅地の広がるアスファルトの道を
行ったり来たりしたことを
思い出して苦笑した

人通りもやけに少なく
民家とビニールハウスとが交互に入り組み
歩くたび蒸されたような食物の匂いと
土の香りとが鼻についた
喉の渇きを覚え
あまりにも歩き疲れて
自暴自棄になりながらも
やっと辿り着いた安堵感

(今目の前で彷徨いている羽蟻も
目的地に着くだろうか)
そんなことを考えながら
もう一度網戸のほうへ目を向けると
羽蟻の姿はいつの間にか消えていた

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