真夜中のシュークリーム 蒼井百合亜
亀裂の入った胸に雨が降る
行き場のない悲しみが
降り重なって
頑丈な化石になってゆく
「強くみえるでしょ
疵なんて どこにもないって」
頑丈な化石が
見えないほんとうを隠す
誰が探してくれるだろうか
見えないほんとうを
仮面の下で
こっそり泣いてるわたしを
「真っ直ぐに球を投げても
返ってこないのは
壁が歪んでいるからですか
さみしいものですね
優しげなだけのあなた」
寝落ちして
目が覚めれば雨
窓の外 降りしきる雨
雨音に疵が疼くから
今は 甘い夢を見させて
人工甘味料より
もっともっと甘い夢を
生きてゆく簡単じゃないこと
優しさも正義も
自己陶酔できたなら 世界は終わる
終わりたくないわたしに
いまは 夢を見させて
ぐったりと
酔いしれたいのです
魔法の薬は
真夜中のシュークリーム
ひとしきり 雨音は消え
ねっとりと
甘い夢が絡みつく
眠りたくない夜だから
ワインは欲しくないのです