色合わせ 紫陽花
朝起きると新聞を取りに玄関外に出る
ついでに水やりもするので裏庭に回る
今日も静かな朝だ
ただいつもコンクリートの壁にくっついている
灰色の蛙が今日はいない
暑いからメダカの水槽の縁にいるのかもしれない
そのまま薔薇の木の方へ行く
この時期の薔薇には虫がつきやすい
薔薇の木から水をあげようと近づいて
ふと違和感を覚える
今年はかなりイラガにかじられてしまって
黄色い葉っぱやら辛うじて緑の葉っぱ
その下から薄赤い新芽と
随分カラフルになってしまっている
その葉っぱのひとつが薄緑に少し膨らんでいる
よく見ると葉っぱのふりをした蛙だ
灰色っぽい薄い緑の蛙は
少し濃いめの薔薇の緑になろうとしていた
痛くないのだろうか 苦しくないのだろうか
薔薇の葉色に染まる蛙は
見ている私は少し息苦しくなってくる
いつも母のいい子であろうとした私
その間 私は苦しかったし 痛かった
最近になるまでずっと母は私のベースだった
母色の私でなければ私ではなかった
服だって食べ物だって全部母の好み通りの私
私は母親そのものだった はずだった
いつの頃からか私にもそれなりに自我が芽生え
いつの間にかすっかり母色ではなくなった
現在 部屋の隅で
今ではすっかり勢いのなくなった母が
今日も泣いている
どうして私の気持ちを分かってくれないの
家族なのに私の事を心配してくれないの
そう繰り返してはしくしく泣いている
部屋が澱んでいる
その部屋にいては 私まで澱んでくる
母色を思いながら 庭の木に
水をあげていくゆっくり水をあげて また薔薇の木に戻る
陽が当たるようになったせいか もう蛙はそこにいなかった