しあわせはカレーの匂いかもしれない 松本福広
夕方4時
いつもの散歩道。
その道中には
ネパール料理を
振る舞う店がある。
まだ開店前
ネパール人の夫婦が
仕込みをしながら
微笑み合い会話をしている。
2人は2人にしか
分からない言葉で微笑み合う。
また別の日の夕食時
その料理店に食事に行く。
店内にはスパイスが使われた
カレーの匂いがほんのり香る。
あの夫婦の雑談と
笑い合う声が小さく聞こえてくる。
自分の家族を思い出す。
大好きなカレーの時は
匂いがするだけで
ワクワクした子どもの頃。
前のめりになった
私を見て両親が微笑み合う。
私が思い浮かべるしあわせ。
ネパールの彼らが思い浮かべるしあわせ。
日本で「ふつう」と呼ばれるしあわせ。
ネパールでのしあわせ。
日本のカレーと、ネパールのカレーは
似ているけれども
どこか似通っていないように。
きっと、どれも繋がらない。
それは繋がらないままでも
実際に繋がなくても
私たちの間には目には見えないもので
繋がっている。
それは匂いかもしれない。
もしかしたら、カレーの匂いかもしれない。