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スレッドNo.4229

はためき  理蝶

ある朝 おきて
僕が布団をはためかせると
のんきな羽毛が舞い上がって 
本棚の裏へと消えていった

この部屋に
わずかなわずかな風が吹いていることを知った

ある朝 おきて
僕が海をはためかせると
南の島はまるごと濡れてしまって
ねむらない魚群は朝日に
ぴちぴちと光った

南洋のサーファーたちは
たいそう喜んでくれたようだった

ある朝 おきて
僕が空をはためかせると
青い稲妻のような静脈が透ける
白い太ももが見え隠れした

神様はドレスの裾をさわられて
くすぐったそうにしていた

ある朝 おきて
僕が君をはためかせると
君の下から とつぜんに
コルク栓の小瓶があらわれた

僕はなぜだか  
瓶の中に入っているのは
すぐに涙だとわかった

僕は小瓶をのみほした
つめたいハッカが抜けていった
君はまだ起きそうになかった

柔らかくふれる 
おそれと いつくしみを指先にこめて
すると世界は はためいて
覆われている向こう側を
時折 のぞかせてくれるだろう

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