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スレッドNo.4236

2024年7月9日~7月11日ご投稿分、評と感想です。 (青島江里)

☆2024年7月9日~7月11日ご投稿分、評と感想です。 

☆靴  喜太郎さん

サイズの合わない靴を我慢して履くというのは、なかなか辛いものですよね。今回の作品は、みんなと足並みをそろえるために、似たようなデザインの、しかも、サイズの合わない靴を無理して履き続けるというイメージのもと、社会の暗黙のルールの中で感じる生き辛さ。そして、無理した生き方をしている自分を解放させてあげたいという気持ちが表現されている…そのようなことが伝わってきました。

一連目の「キツい」ですが、「キツイ」にされる方が自然だと思いました。

二連目の「社会に出て靴を履き替えて/いろんな靴を履いてきた」ですが、「履き替えて…履いてきた」と、「履く」という言葉が重なって、どこかもたついた感じになるので「社会に出ていろんな靴を履き替えた」などにまとめると、すっきりすると思いました。

五連目の「キラキラと輝く水面」ですが、このままでもよいと思いますが、やはり、俯いて歩き続けて顔を上げた瞬間に現れた海の光は、感動的なものだと思いますので「キラキラ」という言葉を、作者さんのオリジナルな表現にすることで、更によくなると思いました。

最終連の「裸足で歩こうか…」の「…」ですが、単独一行の連にしてあることもありますし、なくても充分に、余韻のようなものは伝わるように思いました。

感情表現については、飾り気のない素の部分の感情が、あちらこちらに満ち足りていて、ここちよい風に吹かれているような気持ちにさせてもらえました。自分らしく自分の信じる道を歩きたい。そのような方向に気持ちを向けさせてくれる作品。今回は佳作半歩手前を。



☆とあるホテルマンの日常  松本福広さん

通勤電車で思うこと。あぁ、私だけではありませんでした。そうなんですよ。すいている反対方向に目がいきますよね。そして、そのまま景色のいいところまでいってしまいたい…と、思ってしまう。そしてその次もそうなんですよ。実際に行ってしまう勇気はないのですよね(笑) この作品を読んだ方は、きっと、同じような気持ちで詩行をおわれるのではないでしょうか。次はどうなるのかなって。変な例え方になってしまいますが、この始まりの一連って、入ったことないんだけど、なんか入りやすいお店の入口の自動ドアの入口を踏みしめてその空間に入っていけたというような感じ。そんな一連でした。

そして後に続く連では、ホテルマンのお仕事の様子。心のこもった挨拶を心がけることに始まり、日々のルーティンが。そして接客業では、特に多く遭遇するクレーム処理。ホテルマンのお仕事を綴られてはいるものの、拝読していると、どんなお仕事でも、みんな、大変な気持ちをして、生活を成り立たせるために働いているのだと思わせてくれます。

理不尽なことがある。人間っていろいろだな。だけど、困った人ばかりではない。それでどうにか救われている。あなたもそう思いませんか?そのような呟きが、詩行と詩行のあいだから聞こえてきそうですね。そして、誰かに救われながら生きていると感じた時に、思い浮かんで気づく、一番身近な人の姿と気持ち。その喜びを一緒にビールを飲もうっていう言葉に置き換えているところは、日頃の感謝の思いはもちろんのこと、乗り切れた一日を共にお祝いするような風にとることもできて素敵でした。生活って、同じ方向を行ったり来たりしているように思えるけれど、同じように行ったり来たりたりできているその内側にあるものをみつめれば、新たにみえてくるあたたかいものがあるよって、伝えてくれているように思える作品だと思いました。



☆寂しいを分かってあげられない 紫陽花さん

お母さんのうつ症状からきている寂しいという気持ち。そして、「私」の一人の時間が好きだから、母の寂しい気持ちが全くわからないという、その葛藤。このようなテーマをどんどん独自の感性で広げていらっしゃるのですが、これがまた、私自身の一方的な嘆きにならず、第三者が両者を見つめるような視点で書かれているようにも思える詩の組み立て。いつのまにか詩の世界に吸い込まれていた…そのような感覚に陥りました。

① 病院の現地の様子→
② 母の様子をみて物思いの世界に入っていく私→
③ 我に返る。

このような流れになっているのですが、特に②の物思いの世界の描写が鋭いものを感じました。私が住んでいた海辺の町の様子でしょうか。その町の様子。焦点を当てている数々のもの。実際に行ったことのない人間でも浮かび上がってくる景色の描写。そのどれもが、どこか寂しさや不安を感じさせます。特に狭いところにいると安心するからの「猫の血が流れているかもしれない」の発想はすこぶる印象的な表現でした。またここから我に返ってからのラスト。「岬の町を半分猫になって迷子になる」は、どうしようもない迷いや不安が伝わってきますし、何よりも「半分猫になる」の「半分」は、全てが猫のような心ではないの…半分は人間の心が残ったままでいるの。或いは、残ったままでいたい。というような気持ちを感じさせてくれました。

私が母の気持ちが分かってあげられない理由。読み終えてから一気に迫ってくる切なさ。
佳作を。


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※一人で書きあげた作品。無性に誰かに読んでもらいたいと思う時、私の担当の日が、少しでも、そのようなお気持ちの方々のお役に立てればさいわいです。ここに書かれている感想など、筋が違うなと感じる時は、こんな感じ方もあるのだなと受け流していただければありがたいです。返信のなかみは、どうぞご遠慮なく、いいかもと思ったもののみ取り入れてください。私ならこんな感じかなという内容の部分は、赤入れ的なものではなく、意見交換のような気持ちで書かせていただいています。個人と個人。詩の好きな知人に手紙を書くような気持ちで書いています。一生懸命に生み出された作品。拝見させていただく機会をありがとうございます。おたがいの詩生活が、よき時間となりますように。

酷暑続き。詩作の途中の水分補給も忘れないでくださいね。
みなさま、今日も一日、おつかれさまです。

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