光 相野零次
光に憧れる僕のまなざし。
遠くの空に渇いた心を投げかけて溜息をつく。
ふん、嗅いだことのない香りがするから、ふん、ふんと鼻を犬みたいに鳴らして。
手をかざして湿り具合を確かめる。足をふみだして地面の固さを測る。
あらゆる具合を試さなければ気がすまないから、そうだ明日は君を巻き込んで、一緒にいろいろ遊ぼうよ。
君となら退屈な日常も楽しめる。
君は僕の光になりうるかもしれない。君はきっと優しい人だから、僕の手すさびにも笑ってくれるのだろうね。
ああ、雨が降ろうとしている。
僕の憂鬱がどしゃぶりになろうとしている。
凍えそうな夜がやってくる。いけない!
こわいこわいおばけが顔を出す。
不安が押し寄せる。
だから僕は眠りにつけない。詩が僕を救おうとするから、僕はいつまでも書き止まない。
こんなとき、光が僕の救い。
蛍光灯の明かりでも十分だ。このままずっと起きていようか。
いけない! それは闇への誘惑だ。
眠らなければ朝は訪れないこと、僕は知っている。
十分に眠った。
僕を素敵にいざなうことが少なすぎて、僕はほとんど寝てばかりだから、薬も僕を癒してくれるから、少しぐらい起きていたってどうってことないこと、僕はわかってる。
物語の続きを語ろうよ。
くまさんと遊んでもいい、子供の頃に還って。
はちみつを取りにいこう、光の色と似ているから。
童話のなかに取り込まれて、ぶらんこにのって、公園があるからくつろごう、鉄棒もあるし、ぐるぐるしよう。
楽しい、哀しくない。ひとりだから寂しいけど、平気。
空想のなかを旅しよう、大人になろうか。
空を飛ぼう。青空のなかをどこまでも、雲を突き抜けて、雲はどんな味がする?
もう少し、もう少し羽搏かせて。
鳥の羽根が僕の手から生えているから、僕は飛べるんだよ、すごいでしょ。
大人も子供も、男も女も関係ない。
歌をうたおうよ。
歌が僕は好きなんだ、歌うのはちゃんとした趣味なんだよ。
今日も僕は歌ってきたんだ。カラオケボックスっていうのが下界にはあるんだよ。
ミスチルが十八番さ。
『動き出した僕の夢、高い山超えて。虹になれたらいいな』
星になれたらって歌。素敵な歌。
そろそろ帰ろうか、おかあさんが心配するから。
毎日ご飯を作ってくれてありがとう。
おかあさんもいいけど、どこかの素敵な人のお弁当が食べたいな。
すばらしい朝日を夢見て。
真実の眠りが訪れようとしている。