夏祭り 紫陽花
夏祭りの喧騒が恋しくなった
夕方は6時前 気温はまだまだ30度を超えて
少し汗ばむ気温の中
今年も黒地に赤い金魚の模様の浴衣を着る
そのまま日が暮れると
私は闇に紛れて金魚になる
金魚の私はアーケードを泳ぎ始める
金魚は甘いものが好きで
ちぎった綿雲のような綿菓子をいただく
ゆらゆらと綿菓子をつまみながら人込みの中を泳ぐ
いろんな音が声が聞こえてくる
たこ焼きを焼く音 楽しそうな笑い声
かき氷を削る音 屋台の呼び込みの声
射的の音 小さな子供の泣き声
でも 私はもう金魚になってしまったので
そんな喧騒全てはただの景色だ
善意も悪意も知ったことではない
喧騒はにぎやかで好きな景色だが
喧騒の中には悪意なんて雑音もある
雑音は聞きたくない
もうこのまま私は金魚でもいいかな
なにもかもから解き放たれて りんご飴に口をパクパクしていたら
金魚すくい屋のおじさんがやってきて 私を迷子の金魚と間違えて
金魚違いですなんていう暇もなく水槽に入れてしまった
しかし 水の中は地上よりもっと静かで居心地がよく
私はしばらくここで暮らすことに決めた