暇を持て余す 秋乃 夕陽
今度はどんなうたをうたおうか
三時を少し回ったばかりの鴨川のベンチで
川の香りをかすかに嗅ぎながら
風に揺らされたまま
少し汗ばむ額に張り付く前髪かき揚げ
ごぉーごぉーと唸る白い水飛沫をみながら
向こう岸へ目を転じると
誰もが遊べるような拓けたスペースで
ゲートボールに興じる三人の年老いた男性
あちこち行ったり来たりしながら
腰を屈ませ腕を振るう
そのちょうど前辺りの小道では
黒っぽい帽子をかぶって
鼠色のTシャツを着た中年の男性と
緑色のリュックを背負い
前屈みで銀色の自転車を漕ぐ青年が
ちょうどクロスするように擦れ違う
少し離れたベンチには
白い帽子とTシャツを着た丸い体型の男性が
川岸の正面へ体を向けたまま
眠り込んだように顔を下に俯かせて座っている
そこから斜め後ろぐらいの草むらでは
茶髪で長い髪の若い女性が
水色の自転車を停めたそばに座り込んで
なにやら一生懸命
ノートらしき紙に書き込みをしている
誰もお互いを顧みることもなく関心すらない
それでも草の香りを纏わせながら川は流れていく
かすかに揺れる緑と白い花と水飛沫と水面と
ゆっくりとしたペースに合わせながら
行き過ぎる人の影は流れる