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スレッドNo.4272

感想と評です 7/16〜7/18までのご投稿分の評です。  滝本政博

「真夜中のシュークリーム」  蒼井百合亜さん  7月16日

今日は美味しいものを食べて自分に優しくしてあげよう。そしてチョイスされたのは、「真夜中のシュークリーム」。
可愛い作品です

<頑丈な化石が
 見えないほんとうを隠す
 誰が探してくれるだろうか
 見えないほんとうを
 仮面の下で
 こっそり泣いてるわたしを>
この連のイメージがとてもよいです。
化石(胸)の中に隠されたものがあるわけです。
それは大事なものなのでしょう。
もう少しこのイメージを膨らませた書き方をしてもよかったかな、と思いました。
というのは、詩に少しまとまりのなさを感じたからです。

「真っすぐに球を投げても
 返ってこないのは
 壁が歪んでいるからですか 
 さみしいものですね
 優しげなあなた」
このセリフも詩全体からすると、唐突な感じがしました。

<魔法の薬は
 真夜中のシュークリーム
 ひとしきり 雨音は消え
 ねっとりと
 甘い夢が絡みつく>
 お気持ちが伝わります。
私も甘いものが好きで、月に一、二度深夜のコンビニに走ったりします。
<眠りたくない夜だから
 ワインは欲しくないのです>
うん、そんな夜もある。私はお酒は飲みませんが、わかります。共感いたします。


「一方通行」  喜太郎さん  7月16日

レトリックが使われているわけですが、これ何と言うのかな。
<発想>=アイデアの発見があるのです。
今回で言えば、あなたを思う恋心が車の一方通行に喩えられ、幾重にも発展、展開して書かれていきます。上手いものだなー、感心いたします。
一人称のスピード感のある語りも、内容に沿っていて良いです。
でも、わたしの中で喜太郎さんの評価は高いので、今回は佳作一歩手前とします。
理由は、展開がわりと常識的にも感じられるからです。もっと読者を驚かし、なおかつ納得出来るような例がいくつかあればよかったです。
あと、モチーフが恋に関する詩が多く、私の中では恋愛の詩人というイメージですが、他のテーマの物も読んでみたいなー、と希望いたします。


「財産目録」  津田古星さん  7月16日

タイトルがいいですね。「財産目録」。私も同じタイトルで書いてみたくなりました。自分は何を持っていて、何を持っていないのか。自己紹介の詩に持ってこいですね。
最後の二行で前項に対しての発見があり、これで詩らしく体裁が整いました。
でも、<以上>以下三行、この部分を書かないという書き方もありだと思いました。その場合、目録の方を長く書くことが出来れば、自己への新しい発見があるかもしれません。

ひとつずつ見ていきましょう。
<1、 平和な国にいること。>
昨今の世界情勢を見ると、本当にありがたいことです。
でも隣国のミサイル発射や、憲法改正などの動き、戦争をしている国へのお金の支援等々、気になる動きは多々ありますね。

<2、四季が巡ってくること。>
俳句、和歌などの豊かな文化に触れる度にこの国に生まれた幸せを感じます。
春の桜、夏まつり、秋の紅葉、雪景色、日本は美しい国です。

<3、温暖な地に住んでいること。>
極端に暑い国や寒い地域ではないことのありがたさがありますね。
また、津田さんは日本の中でも温暖な地にお住まいなのかもしれません。

<4、健やかでいること。>
とても大切なことですね。健やかを辞書で引くと、病気をせず、丈夫なこと。健康。とありました。

<5、自由に考え、ものが言えること。>
言論統制などがあり、このことが出来なかった時代があること。そのとこについて戦った人がいることを忘れないでいたいと思います。

<6、人を憎んだり恨んだりしなかったこと。>
<7、まっすぐ私らしく生きられたこと。>
努力して得たものはないということですので、これは津田さまのお人柄。素敵なことだと思います。

8、あなたに出会ったこと。
この項目が最後に登場する事に幸あれ。なんて素敵な財産目録であることでしょう。


「色合わせ」  紫陽花さん  7月17日

佳作とします。
<朝起きると新聞を取りに玄関外に出る
 ついでに水やりもするので裏庭に回る
 今日も静かな朝だ>
文字通り静な出だしで詩は始まります。
そして、お庭の描写(ここはたっぷりと行数をとってあり、その後の展開に効果的に効いてきます)。薔薇の花にくっつき、葉っぱのふりをした蛙を発見します。
蛙が色を変えることは知りませんでした。ググってみました。
<アマガエルは、植物の葉の上に居るときは黄緑色をしていますが、茶色い地面に居る時は暗い色に、コンクリートの上に居る時はコンクリートに似た灰色っぽい色になります。正常なアマガエルは、黄緑、茶色、灰色、白色に色を変えることができます。このような色の変化は、シュレーゲルアマガエルやモリアオガエルなどの他のミドリ色のカエルにも見られますが、日本で最も顕著にこの変化を確認できるのはアマガエルです。>とありました。ひとつ賢くなりました。ありがとうございます。

二連目で詩はぐっと様相を変え、これまでの私と母の相克が描かれます。
<いつも母のいい子であろうとし>て苦しかったこと、痛かったこと。
<母色の私でなければ私ではなかった>
と、色についての言及があり、一連の蛙の意味が分かってきます。
そして自我の芽生え、母離れが語られます。

三連目で現在の母の様子が語られます。
母の子離れはうまくいかなかったようです。

最終連は、ある種のカタルシスがあり、うまく着地しています。
タイトルは詩の内容に即していてよいと思います。


「上海租界」   秋乃 夕陽さん  7月18日

詩は読者に教えてくれます。情報を提供してくれます。
この詩で言えば
第二次世界大戦中の上海という特殊な場所のこと、
終戦直後の引き上げ者の悲惨な状況等です。
ここに書かれていることは、現在の日常から考えると、目を覆いたくなるような残状ですが、このような時代があったことを、知らせることは価値があることですね。

この詩は当時まだ幼かった少女の体験談という体裁をとって書かれていますが、思い切ってもっと少女の内面に踏み込んで書いても良いと感じました。創造の世界ではそれも許されるのではと思うのです。
さらに踏み込んで<当時、少女だった私は見た……>と、一人称で書くことも可能です。その場合、さらなる取材と想像力が必要かもしれません。

私は自分のことを棚に上げて、この評を書いていますが、詩は自由であり、かつ厳しく倫理的だと相反する思いを強く感じています。それは、詩は書く者の魂と深く関わっているからでしょう。

難しいテーマです。よく書けていると思いますが、欲を言えばさらに一歩踏み込み<詩としての展開>があればと感じました。
現状は、行分けを繋げてみると、普通の散文として読めてしまします。説明するのが難しいのですが、詩は文中に飛躍があったり、比喩などのレトリックを使ったりの工夫で普通の散文で書けないことを書ける文芸だと思います
難しい問題であり、自戒を込めて書いていますが、ご検討ください。

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