負の連鎖を断ち切る光トカゲの物語 荒木章太郎
雷が怒号のごとく
怒号が雷のごとく
稲光がたまに落ちる
負の連鎖のフラッシュバック
肉体に記憶され世代を超えて伝播する
目はよく見ろと叱られた
泣かされたら涙で見えない
耳はよく聴けと叩かれた
耳鳴り響いて聞こえない
口は「バカなことを言うな」と殴られた
うまく呼吸ができないから
酸素や愛を摂取できない
仕方がないから頭と体を切り離し
野に解き放ち痛みをなくす
それぞれに名前をつけて
役割与えて世界へ放つ
梅雨が開けたと
光トカゲが教えてくれた
人を殺せる程の暑さだ
父も母も死んでしまった
眼耳口がそれぞれに
刻んだ記憶を持ち寄って
お盆に集まる時が来たのだ
目は光トカゲを食べる国をみたという
耳は光と影が毎日争っている国のことを聞いたという
口は影のない国の料理を食べたという
最初は話が噛み合わなかった
光と影は対立しない
無意識と意識は争わない
諦めないで対話を続けて折り合いつけて
負の遺産を売りに出すのだ
このままでは誰も買わない
互いの個性かき集め
新たな物語を創作する
光トカゲはずっとみていた
俺も光と影をずっとみていた
身の危険を感じると
影の尻尾を切り落とす
夜が更けると世界が影に覆われる
光トカゲは空に張りつく
尻尾は稲光流れ星となり闇を切り裂く
光と影は混じり合い
一つの躰に統合された
朝には光が生えてくる
俺には未来が生えてくる