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スレッドNo.4301

片方の松葉杖  荒木章太郎

片方の松葉杖をついて
少女が炎天下を一人歩いていた
俯いているわけではなかった
足元に広がる
原子一粒一粒を見据え
コツコツと道を確かめながら
何事も痛み分けばかりと省みていた
自業自得か
アスファルトの
照り返しが悪いのか
自責と他責のバランスを取りながら

カラスは輝くという理由だけで
足元に落ちていたコインを
表裏を確かめることもなく
奪い取っていった
さすがに動揺した少女は
靴紐を解いて
不自由を開放させて
理不尽と運命を結び目にすることをやめた

五分五分

ゴブゴブと
音を立てるのは
この暑さで液状化した俺達だ
色々な型に合わせられる液体は
平等であると
勘違いする優しさが
彼女に日傘を渡そうとする
浅はかな水溜まりだ
そんなものにはまらないよう
コツコツと注意深く歩いていた
危険な暑さだ
ゴクゴクと水を飲ませる
ペットボトルの水になる
覚悟がないことは
お見通しであると
コツコツと疑い深く歩いていた

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