秋になったら 秋さやか
秋になったら
詩集を読みましょう
懐かしい空気に包まれて
他人事のような思い出に浸る
秋の夜
思春期からずっと
寄り添い続けてくれる
静かな言葉たちは
散る銀杏が大地をあたためるように
淋しい眠りのなかへ
降り積もってゆきます
音楽は絶え間なく
そこにあり続けるでしょう
けれど詩は
どこにあるのでしょう
いつか
心許ない夜の片隅で
あなたが手を伸ばしてくれるのを
ただそこで待っています
ささくれだった
指先でなぞる星座のように
静かに輝く言葉たちは
絶え間なく耳にする音楽や
絶え間なく目にする小説には
きっとかなわないけれど
途切れとぎれ
明滅しながら
けれど一番強く
光を放っていることに
気づいてほしいのです
秋になったら