感想と評 7/26~7/29 ご投稿分 三浦志郎 8/4
1 上田一眞さん 「雫とりんどう」 7/27
まず、この詩を味わうには大平山を調べ、あけび~りんどうと行くのが作法でしょう。
ひと足お先に初秋の風情でしょうか。まず湧き水の新鮮さが目を惹きます。そして水に導かれるようにして現れるりんどう。あけびとりんどう、濃淡はありますが、青紫系の色合いですね。背景に水があって、その色の瑞々しさが上手く浮き上がる感じがします。清涼感があります。母上のことが、たった1行出て来ますが、僕はここは思いがふくらみました。上田さんもご年配と拝察しますが、僕ら世代というのは、だんだん親の年齢に近づきつつある、といった思いがあるものです。そういった感慨で以って親を思い出すことは、えも言えぬものがあります。たった1行でも、です。しかも、りんどうに寄せてー。佳作半歩前を。
アフターアワーズ。
りんどうは馴染み深いものです。僕の住む市の花でもあります。桔梗と共に好きな花ですね。
2 荒木章太郎さん 「負の連鎖を断ち切る光トカゲの物語」 7/28
タイトルの一部「光トカゲ」は暗号のような気がします。すなわち「光と影」。ただ、どうでしょう?
タイトルにはありますが、光トカゲはさほど重要な役割は果たしていないように僕には思えるのですが。思うに、そういったキャラクターのようなものが欲しかったからか?いっぽう「負の連鎖」を解釈するに人間は過ちを犯す負の属性があるとか、終わらない戦争とか、そういったものをイメージしやすいのです。とにかく荒木さんは荒唐無稽な表現で詩を包みながらも、実は人間や世界に潜む病巣のようなものをピックアップして糾弾しているのではないか、そんな推測は成り立つわけです。今回のホンネは「諦めないで対話を~新たな物語を創作する」あたりにある気がします。よくわかりませんが、前作よりも一歩深みがありそうに思います。 よって佳作を。
3 じじいじじいさん 「みずあそび」 7/28
トリのみずあそびで、これだけ音がするかどうか、その検証はさておき(笑)、でも、かえってこの方が童話的なニュアンスをもたらしていて、いいかもしれないです。「トリたちはみんなたのしそうにわらっている」あたりは、全く子どもの感覚であり童話的です。そんなアプローチで書かれたことと推察致します。特にトピックスのようなものはないのですが、いかにもお子さんが書きそうなリアルはあるわけです。タイムリーでもあるわけです。佳作一歩前を。
4 相野零次さん 「希望と絶望」 7/28
前作は「生と死」。こういった対位的なアプローチを僕は嫌いではありません。むしろやりたいほうなんです。まさに人間の裏表、その対立と一体です。2連までに、そんな感覚が提示されています。以下、読んでみると希望VS絶望=70%:30%くらいの比率ですね。「眠りに包まれれば リセットボタンが押される」で深く頷き、「おいしいパン~」の連で、思わず微笑む、そんな読み方をしていました。実際、このパンの連はいいですね。良い事例になっているし、詩に変化というか、希望に似あった軽快感を醸し出しています。好きなパートですね。絶望を下敷きにしてジャンプアップした詩です。その気分を掬い取って佳作、と。
5 ベルさん 「夏のユメ」 7/29
これは推測ですが、どんなに暑くてもベルさんは夏が大好きなのだろう―と。僕も同様です。
そんな気分が3連までで、ありありとわかるのです。
「おもちゃ箱をひっくり返したような/毎日だ」
気分が乗ってくるような良いフレーズですね。そうこなくっちゃ!(ちょっと西脇詩の“天気”をイメージさせますが) それ以降は夏世界を大きく捉えて広がりを見せています。終連はどうしてこうなったんだろ?(木登り?) タイトルの「ユメ」と関係ありそうな……。ちょっと笑いたくなるような、それでいて謎のような。佳作一歩前で。
6 静間 安夫さん 「ギリシア」 7/29
なるほど、普段はあまり話題にはのぼらない国ですが、じっくり考えると凄い国であったわけです。
古代文明、哲学、そしてオリンピック。文中にある通り「精神と肉体を鍛え徳を見につける」そういった人々でした。ここまで、その国の歴史、民族性を専門的にならず、しかも過不足なく伝え、詩的でさえあります。概観歴史の伝え方のひとつの模範を見る気がします。終連のまとめ方がいいです。3行目まで、その通りです。「だからこそ」の気高いフィナーレを迎えています。佳作です。
評のおわりに。
誠に勝手ながら、今回と次回は夏休みという意味合いを込めて、(もともと多くないけど)評文量を10%~20%ほど
減量させて頂きたいと思います。事情ご賢察の上、よろしくお願い申し上げます。では、また。