星吹くクジラ 荒木章太郎
この大空に目クジラが住んでいた
頭から星を吹き
自ら川を作りながら
夜空を進んで海へと向かう
俺だって道なき空に住んでいた
地に足が着かないから
周りから目くじら立てられて
地上で馴染むことができない
空でいったい何をしようか
たいてい航路を描くらしいが
目クジラのうしろについて
海へと向かって行く事にした
星の粒子は波となり
波打つ白波ながれ星
大地を濡らす流れ星
祈りを捧げる人達の
願いを叶える仕事に就いたが
願いは叶わず目クジラが立つ
自分で川を作りながら
夜空を進んで行くしかなかった
大願は各自の海で遂げるらしい
目クジラが誰かの海に辿り着く
せっかく空に慣れたというのに
今度は海へ還れというのか
俺の海はどこにあるのか