イチゴ大福 温泉郷
あなたは
誰も恐れない
言いたいことは
堂々と言う
まっすぐに言う
権威を嫌い
不正を嫌う
掃除に来るスタッフには
好かれるが
偉そうにしている連中には
嫌われる
沼の中で
女一匹 泳ぐのは大変だ
損な性格だと
自分でもわかっている
それでも
毎日を真っすぐに
自然に生きている
僕は知っている
あなたの中には
いつからか
1人の少女が
転がり込んできて
そのまま 住みつき
あなたの代わりに
悲しんだり
寂しがったり
泣いたりして
家賃を払っていることを
その少女は決して怒らない
でも とてもよく笑う
あなたが誰かに傷つけられたとき
偉そうな連中から攻撃されたとき
僕はあなたに
慰めの言葉はかけるような
無謀なことはしない
僕は少女に語りかける
少女は駄洒落が大好きだから
オヤジギャグを飛ばして
「何よ、それ?」という
あきれた顔をするあなたと
笑い転げる少女を
あなたの瞳の奥に
同時に認める
あなたが大好きな
イチゴ大福
「いらないよ」という顔をするけど
しぶしぶ食べはじめる
イチゴ大福の香りと甘さが
口に広がったときの
少し和らいだあなたの瞳の中に
「おいしい!」と叫んでいる
少女を見つけて
こっそりとハイタッチをする
そうして
ゆっくりと時間が流れ
ようやく あなたも
微笑みを浮かべる
そのときだけ
少女も少し意味ありげな
微笑みを浮かべて
あなたの中から
しばし席をはずす
そのときだけ
あなたは
少量の涙を流す