日々 理蝶
僕はしろい教室に行き
あおい画面をながめに行き
そして
人がどのようにして死ぬかを
まなぶ
ひとつの細菌もいない針を
からだに刺して 薬を注入する
そして ベンゼン環のはたらきが
うまくゆけば
病は消え去るだろうと
その確率は これくらいだろうと
ならう
僕はこのさき
きれいな針を刺して
きれいな腹を裂いて
たぶん何人かの人をころしてしまって
そういう人として
生きてゆくんだろうなと
おもう
いのちは 僕にすごむ
日々 すごむ
お前の手に あずけられるものは
ごめんなさい が
いちばん効かない ものなんだと
誰しもがもつ
このどうしようもない一回きりのかがやきが
どうしようもなく一回きり であることを
毎日 つきつけられているようで
かなしみや おそろしさ
のぞみや うつくしさ
ぜんぶにのまれてしまう
たまに信じられなくなるんだ
自分のことも
自分のこれから行こうとしている先も
たった今もこの胸に鳴っている
きまじめな律動さえも
だから僕は
いつも空ばかりながめてしまう
空のひろさに
なにもかもを ゆるして欲しくなるんだ