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スレッドNo.4390

夏の日  人と庸

ふいに
重いカーテンがゆれ
奥の方へしまいこんでいた記憶がなだれこむ

鼻に脱脂綿を詰められた
君のさいごの顔

深くこけた頬の陰影に
君の人懐こい笑顔ばかりが思い出される

このカフェは
全面窓から申し分なく光を招き入れている
何ものをも拒まないこの空間に
思いがけず君もやってきた

君とわたし
束の間おなじ景色を見たはずだった
でも 行き着いたところはまるでちがった

(明日の夏祭りには、
うちからもキッチンカーを出すんですよ)
カフェのマダムの 明るい声がする

そうだ
今はお盆の只中だった

お盆だからあいにきてくれたのか
こんなに情の希薄な従姉の元へも
 

通りには絶え間なく車が走る
聞き分けのよさそうな顔をして

カフェを出たわたしも車に乗り込み
それを操る
ルールを守っていますよ というすまし顔で

夏にかすんだ空の下
幾台もの車が軽快に走り抜けていく
いつでもどこでも
それが凶器になる可能性を孕んで

(この いくつか先のまちだった
君が凶器に倒れたのは)

 しぬことも
 ころすことも
 すぐそばにある

進む道の先に
積乱雲が山脈のように連なっている
あそこに行き着くまで走ろうか
その下では大雨かもしれないが

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