評ですね。8月2日〜5日ご投稿分 雨音
評ですね。8月2日〜5日
「片方の松葉杖」荒木章太郎さん
荒木さん、こんばんは。お待たせしました。
ポテンシャルに溢れた作品ですね。この作品には良いエッセンスがたくさん詰まっています。全体を通して荒木さんが表現したいことを荒木さん流の書き方で近づいている部分がとても良いと思います。個性的であるということは、とても大切ですから。いくついいなと思った部分がありますが、秀逸なのは五分五分というたったの4文字で仕切られた後半への展開です。ここからの展開はとても引き込まれました。ひとつだけ、全体的にもう少しだけ連を分けると伝わりやすくなるのと、作品を味わいやすくなると思います。どこで息継ぎするか、という気持ちで分けてみてくださいね。
「恋文」理蝶さん
理蝶さん、お待たせしました。ちょっとだけお久しぶりですね。
そうなのですね。空が好きなのね。空もこれだけ思われていたら、よろめきそうですね。理蝶さん、今の彼氏をふる準備をしてください!うふふ。もうすぐ空は理蝶さんのものになりそうです!と思わず書いてしまうくらい可愛らしい作品でした。なんと言っても最終連が、思わずクスリとなってしまいます。おまけの佳作です。「いったいいくつの詩歌が」のところだけ、もし私だったらひねるかもしれません。ただこれはオプション?みたいな感じです。
「靴」桜塚ひささん
桜塚さん、こんばんは。
「靴」ってすごく素敵なタイトルだなと拝見していて先ず思いました。そして内容もとても素敵です。とても感動しました。「生きることは靴を選ぶことだ」という言葉もとても印象的です。本当にその通りですね。良いと思って選んでも失敗だったり、間に合わせで買ったのにとっても履き心地が良かったり。色々なことを膨らませていくことのできる作品だと思います。これからも楽しみにしております。
「秋になったら」秋さやかさん
さやかさん、残暑が厳しいですね。お待たせしました。
「わ〜い、秋さんの秋になったら」と一人はしゃいでいましたが、早速拝見させていただきました。詩集と言葉と星と、そして私、そんな作品は秋にふさわしいですね。作品が描き出すイメージ、そして、そこに息づく主人公のキモチがとても柔らかく絡み合っていることがこの作品の最大の魅力です。佳作半歩手前です。
少し細かいのですが、例えば、八連ささくれだったから始まる部分です。ここはとっても素敵な表現で大切な連になっています。この部分から繋がって強く光を放っているのは星座であり、複数の星であることがわかります。一方で「一番強く光を放っている」という部分で、なんとなく、一つだけ光っているような印象も受けます。これは星座の中でも特別光る星があることからのイメージなのかもしれません。ここだけ、ほんのちょっとの違和感がありました。ここからは秋さんのイメージしたものがあると思うのでそこに近づけてほしいなと思います。とはいえ、とっても素敵な作品でした。うっとりでした。
「無情の風」上田一眞さん
上田さん、こんばんは。お待たせいたしました。
こちらの作品は上田さんにとってはとてもとても大切な作品ではないかと思います。ですから、なんだか評価をつけることに躊躇を感じます。そんなことしてしまっていいのかしら、と。というのもこんな風に文字にして書くこと、それはこの事実と向かい合うことです。いえ、この事実だけではなくて、澱みなく流れる時間やそこに並行してつき纏ってきただろう苦しみ、本当に大きなものを背景にしています。その大きなものを最小限の表現で削げるだけ削いで、この詩にまとめられたのかなと想像(でしかありませんが)すると、その力量は本当にすごいものです。この作品は上田さんにとってはかけがえのない代表作の一つだと思います。このままで。そしてあえてつけますが、疑いようもなく佳作です。(佳作以上はつけないのでこれが最上級なんです)上田さん、一つの作品の中にこれほどの大きな思いや歳月を見たのはもしかしたら初めてかもしれません。
「いちひき」人と庸さん
人と庸さん、お待たせしました。まだまだスイカが美味しい季節ですね。
こちらは佳作です。とても素敵な昨日だと思います。
(先に書いちゃうけど次回から少し厳しくなりますのでご承知おきください。)
直すところはあるかもしれません。行分けとか細かいところを見ていくと多分あると思います。それはご自分で繰り返し読んで直してみてくださいね。それが次の作品をよくするはずですから、これは繰り返し読んだり直したり続けてください。あえて直しません。それを超えてもとても良い作品だと思いました。理屈じゃなくて心がそのように伝えてきたので素直に佳作を差し上げます。人と違うって感じることって、辛いこともありますが、堂々としていいんだなって読んだ方が思える作品だと感じています。
「音楽帰る」温泉郷さん
温泉郷さん、こんばんは。タイトルがいいですね。
想像力を掻き立てられながら、拝見しました。
わあ、この作品も素敵ですね。おまけの佳作です。すごくいいんです。構成もいいし、お話もすごくいいし、脱字が一箇所あったけど、それはまあいいかと思っています。初連、最終連は間違いなく良いです。「おまけ」の部分ですが、一行が短すぎる箇所が少し多かったかなというところでした。これはもう少し効果的な使い方があると思うのと、抑揚をもう少しつけられる方が引き立つ部分があるかもしれないなと感じたからです。でも正直に言いますと、ストーリーの良さが際立っていて、細かいところは気にならないんですよ。だから、佳作でいいかな。うん。というわけで、手は入れ直してください。直したら佳作以上のものになると思います。温泉郷さんも次回から少し厳しくなります。
「言葉」相野零次さん
相野さん、お待たせいたしました。
一連に書いてあることを実際に行動に移すような作品だなと感じています。意味なんてあとから考えればいいのかな、という部分ですね。トントンと出てくる言葉たちが、脈絡もなく飛び跳ねて気持ちよさそうに結びつきあっていく、そんな少し不思議な世界でした。その中で、五連目がすごく印象的です。君の捨てたタバコを拾って・もう一度ちゃんとゴミ箱に捨てたいんだ、という部分があらわしているものは深いものだなと思います。「比喩なんて知らないから」って書いてあるから勝手に比喩だと思って考えを深めてはいけないのかもしれませんが、ついつい言葉以上のものを感じてしまったのがその部分です。相野流、ということで、この作品の個性的な良さは大いにありますが、ほんの少し引き算すると作品が少し引き締まって落ち着くかもしれませんね。
「カレーパンダ」松本福広さん
松本さん、こんばんは。
私はこの評を書くときに、自分の担当の期間に投稿された方の名前と作品名をノートに書き出すんです。それで、このカレーパンダというタイトルを書き留めたときに、「読むのが楽しみすぎるな」と思いました。すると、作品冒頭でも、みんな色々な想像をしていたと出てくるではありませんか。私もこの「みんな」の仲間入りをしたような気持ちになりました。そして最後まで読んで、顛末を知って、あら?これはもしかして実話なの?とGoogle先生に聞いたりもして。
巻き込み力のある作品だったと思います。
一行が少し長いところがあるので、そこを少し見直すとスッキリすると思います。そして、二連目ですが、ここは二つに分けて(連を)間に少し変化がつくように最後に持ってきたジョッキに注いだの一行を間に使ってみるのも良いかもしれません。少し手を入れていくと、もっと面白いものに仕上がっていくと思うのでやってみてくださいね。
「湧かないイメージ」ふわり座さん
ふわり座さん、お待たせしました。
今回は僕が僕と会話する、内観的な作品でしたね。難しいものに挑戦しましたね。ふわり座さんの作品を拝見し始めた頃、こういった感じの作品は多かったのですが、今回のと大きく違います。その時はそんな風にはお伝えしていないと思いますが、内観的な作品というのは、一歩間違えるととてつもなく自己陶酔になります。簡単にいうと、読む人のことは置き去りにして、自己満足の世界に近づいていきます。今回、とても冷静に落ち着いて淡々とかかれている部分がとても良いと思います。それで、一つリクエストなのですが、今、僕は僕の気持ちを素直にまっすぐに語っています。これを詩として一歩引き上げるために、少し比喩を使ってみてください。例えばですが、随分と遠くまできたものだ・これはもう後戻りはできないな、のところだったら、上だけをみて梯子を登ってきた、振り返ったらいつの間にかハシゴの下は何もなかった(=もう後戻りできない)けれど引き返すつもりもない、いける限り登っていこう、みたいか感じ。実際には起こってないけれど、言いたいことは同じじゃないかと思います。そこをふわり座さんのイメージに近づけるような例えで書き換えてみるというのをちょっと試してみて欲しいんです。ふわり座さんの次のステップはそこかなと思います。ちょっと難しいのだけど、ここまで着々と積み重ねてきたので、もう少し先に進んでみてはどうかなと提案しました。ところで、タイトルとても良いですね。すごく上手につけてあるなと最初に思いました。
「九時三十分にお客さん来ちゃうからさ」まるまるさん
まるまるさん、こんばんは。今日のトリはまるまるさんです。
お待たせいたしました。
さて、働くお母さんの忙しい朝の一コマ、で忙しいはずのお母さんが、自分のお母さんを思い出して色々なことを考えています。こういうことって自然に起こることですよね。忙しいけど、ほんの数分、なんなら三十秒くらいでとてつもなく思考が広がっていくこと。忙しければ忙しいほどあるような気がします。この作品はごく日常が書かれていることが一番の魅力です。それで、最終連の後に、もう一つ情景が入るとグッと立体感が出てくるのではないかなと欲張りなことを考えました。どいてくれた子供の横顔でもいいし、自分の表情が変わってもいい、なんでもいいのですが、九時半のアポに向けての場面切り替えみたいな感じです。そこが余韻として残り、全部が繋がっていくような気がします。といってもうよくかけていました。佳作一歩手前です。
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まだまだ猛暑が続いていますね。
災害も多く、気の抜けない日々が続いていますが、みなさまどうぞもうしばらく夏を楽しんでくださいね。