夜空の劇場 荒木章太郎
東の地平線で満月が
狡猾な眼をしていた
やがて高度を上げると
おおやけの顔となり
揺るぎなき光を差しのべ
得たいの知れないこの夜を
仮初に照らしてくれた
みんな何処までこの夜を
演じ切るか
みんな何時までこの夜に
持ちこたえるか
この夜は
不安で揺らいでいるのだ
あの夜も
不安で震えていたのだ
「扉座を空に上げるのを忘れていた」
今頃になって
ギリシャ神話のゼウスの便りが
ネットニュースに上がっていた
扉座は実際開閉するらしい
西の地平線で満月が
背中を見せて役を降りる頃
夜空を見上げたら
確かに扉座は存在した
扉の向こうにあるのは
得体の知れないこの世かあの世か
なぜ今頃になって
ゼウスは夜空の星座を塗り替えた
ヒトの進化が追いついたから?
全知全能ではないと
不都合な真実晒されるから?
振り向き様に
月はカラカラ嗤っていた
人工知能が
この世もあの世も
あの夜もこの夜も
いろいろあると答えを弾く
これから俺は
目の前の現象には
捕われないと答えを弾く
お金を稼いで
ロケット飛ばすと夢を弾くと
カランと夜空の扉が開いた