送迎バス 小林大鬼
送迎バスが到着する
男の子は興奮して
いの一番に乗り込む
母親は心配そうに
後から付いて来る
送迎バスが動き出す
男の子は奇声を発して
手すりに掴まりながら
椅子になかなか座ろうとしない
後ろの席の母親は注意する
素直な男の子は自分の興奮を
母親に伝えようとするが
話すことが出来ないらしく
小さな奇声を発するばかり
夏の車窓は過ぎてゆく
男の子は静と動を繰り返しながら
母親に何かを伝えようとする
声にならない無言の言葉で
駅に近づき男の子はまた興奮して
奇声を発しながら立ち上がる
母親は心配そうに我が子を見守る
病院の送迎バスはつくば駅に止まり
二人の親子も騒がしげに降りていった
私は二人の影を見つめながら
母と子の哀しき運命を
思わずにはいられなかった