龍を探す男
俺は何十年も探してきた
龍の棲家を
きっと何処かにあると信じて
今日まで日本中を旅して
龍の家を探していたんだ
だけど龍自体が見つからない
確かに存在は感じるんだけども
空を見上げても海を渡っても
峠を越えても山に登っても
龍の姿はなかった
いる様な気がするんだ
それも近くに
だから俺は人生の大半を
龍を探すことに注ぎ込んできた
龍よ、いるんだろ?
そこに、いるんだろ?
どうして何も答えてくれないんだ?
龍よ、姿を見せてくれ
俺は諦めない
龍を見つけその棲家も見つけ
このカメラに収めるんだ
そうすれば誰も俺を馬鹿には出来ない
俺の感覚も間違ってなかったと証明出来る
ハッハッハ
想像しただけでも笑えてくる
皆んなが手のひらを返して俺を賞賛するだろう
俺を狂人と呼ぶ奴らの鼻を明かすぞ
龍は絶対にいる
いないと誰が証明できる?
ほら、あそこに、ここに
感じるんだ!
その男の頭上には
龍の形をした細長い雲が流れていた
けれども男はそれには気づかなかった……