あの夏 ベル
太陽の光を浴びて想う
まだまだここにいたいんだと
永遠などないと教えてくれたのは夏だったけど
一瞬の中にこそ永遠が宿ると教えてくれたのも夏でした
遠い日の夏休み
夏休みの入り口はまるで永遠の扉を開けたよう
来る日も来る日も夢の中で
泳いでも泳いでもまだ水の中で
まっくろに日焼けした肌と蝉の声
夏まっしぐらだ
じいちゃんはビールに枝豆を用意して
第一試合から甲子園のテレビ観戦
ぼくもとなりに座ってテレビにかじりついている
麦茶でも飲むかとお母さん
昼時になるとばあちゃんが
そろそろ始まるぞとチャンネルを変える
夏休みの日課
あなたの知らない世界の放送だ
怖くて仕方ないのに
テレビから離れられない
放送が終わるとまた
甲子園にチャンネルを合わせる
夜は町内の盆踊り大会だ
夕方になると浴衣に着替えて
夜を待つ
ご近所さんが集まる楽しいひと時
大人はビールを飲みながら
子どもはラムネを飲みながら
盆踊りはつづく
最後はみんなで線香花火
最後に落ちるのをじっと見ている
少し涼しくなった夜風を浴びながら
夏の始まりを懐かしく思う
何もかも終わらないはずの夏が今
線香花火とともに消えてゆく
また来年の夏にって
ぼくは変わらずにいられるかな
大人になってないかな
怖いよ
今年の夏と同じようにまた会えるなんて保証はないのに
夏の友だち 大人にならないでね
また遊ぼうよ
今ぼくはここにいるよ