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スレッドNo.4436

卑屈な精神  荒木章太郎

卑屈な精神は
朝の日差しを屈折させて
泥水に乱反射して
とても綺麗だ

が、しかし、
吹き溜まりとなった言葉が
俺一人だけ虚しく響き
谺のようだ
勝手に思考を反芻させて
無駄な時間を費やしていた
牛はもっと生きるために反芻している

が、しかし、
真っ直ぐになりたい
これまでみたいに猫背だからと
卑屈にならない
猫はもっとしなやかな背骨を持っている
俺の背骨は固まったまま
堂々巡りで堂々と胸を張れず
物事進まぬ卑屈な精神

(が、しかし、と続けることで、真っ直ぐな
気持ちのノイズとなって伝わらないのだ)

反省して「が」を「蛾」に
書き替えてみたら
蛾は夜のコンビニへと
羽ばたいて行った
卑屈な精神の中に隠れていた
生きる欲動が放たれたようで
とても綺麗だ

物事が少し進んだところで
次に「卑屈」を「非靴」に
書き換え「非靴に非ず」とした
靴を履くか裸足で行くか悩んだ末に
小難しい事やろうとしないで
靴は磨いて履くことにした
なんだか気持ちが真っ直ぐ伸びた

真っ直ぐなことが寂しいなんて
言い訳しないで
胸を張って行くことにした
靴はこなれて不靴になった
靴を捨てて裸足なろうと卑屈にならずに
裸足の心で行くことにした

卑屈な精神は不屈の精神へと
変わりつつある

*真っ直ぐなことが寂しい:種田山頭火「真っ直ぐな道で寂しい」を参照した。

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