鳥とトレード 三浦志郎 9/6
この暗闇は煩雑だ
夜だというのに “ああ 鳥たちが鳴いてやかましい”
黒に浮かぶ幾多の色彩は
生きものとしての官能だ
子守歌にしては騒がしい
鳥領域の昼と夜
NIGHT AND DAY OF BIRD LAND
さえずりの音の中
奇妙な闇に紛れて
俺が此処に来たのは理由(わけ)がある
さあ
秘密の取引を始めよう
俺の魂
と
お前たちの飛翔力
と
引き換えようではないか
悪いが
鶏のように地に這いつくばって生きてくれ
魂あれば生きられるさ
俺はといえば―
鳥人間でありたい
あいにくだったな 鳥たちよ
魂は渡したが
俺にはなお本能が残っている
その力で
風を組み立て
風に参加し
風を賛歌し
風に活かされ
風を翼に抱え込む
魂を失った分だけ軽くなり
空を往きたいのさ
空気と水を制しつつ舞うのさ
死ぬまで空の彼方で暮らすのさ
狂気じみたトレードだ
仮説に塗られた夜を過ごし
朝を待って飛び立つとしよう