縄文の足型 温泉郷
母の骨と一緒に発掘された
7センチほどの土製の足型
縄文の赤子が
静かに21世紀の視線を受け止める
紐を通す小さな穴
母は死んだ子の足型を
身に着けていたのだろうか
子どもの死を悼む気持ちは
4000年前から変わらないと
21世紀は展示する
この足型は
今でいう何だろうか?
そう問うた瞬間
足型は何かを放射した
そうだ
今でいう何でもありえない
それは4000年前の何かでしかない
子を失うことの意味を
21世紀は
21世紀の視線でしか
見ることはできない
21世紀の倫理は
4000年前の倫理を
発掘することはできない
それは
そっと土に埋められて
その時代をそこに保存した
その時代のために
21世紀も
無数の足型を生み出している
母の悲しみも
4000年を経て
どれほど変わっていることだろう
足型は 自然光にまぶしく眼を細めて
縄文の土の中に帰る日を夢みている
母とともに
21世紀に優しい眼差しを投げかけて