僕の名前をご存じですか? 松本福広
食パンの袋を止めるあれ。
僕はそう呼ばれている。
必要としている人しか知らないだろう。
名前を便宜上呼ぶ必要がある人しか知らないだろう。
さて、ここで振り返ってみてほしい。
日常に溶け込みすぎて
身近な人に対して名前を呼ばずに
過ごすことってないかな?
僕の名前を確実に知っている人は
先ず作っている会社の人々。
全国で一社しかない。
きっと、その会社の人たちは僕の名前を知っているはずだ。
もっとも、その会社の知名度もどうなのだろうと不安になる。
僕の知名度と同じくらいなのかもしれない。
あとは僕を発注する人たちが
僕の名前を知っているはずだ。
実は色も穴の形も
担当者同士の打ち合わせを経て決まるから
♡の形や×の形の穴があったりする。
あとはパンの袋を止めるだけじゃなくて
何か保存したい食材を入れた袋に使ってくれてもいい。
ネームタグ代わりに使ったり輪ゴム止めやケーブルの絡み防止に
箸置きに、テープの端っこにつけて次に使いやすいように。
用途以外に使っても、そんなにデメリットはないと思う。
僕の名前を誰かに永遠に覚えていてほしい。
歴史に残したい。そんな風には思わない。
僕を大切にしている人
僕を必要としてくれている人
そういう人たちが
僕の名前を呼んでくれればいい。
それでいいんだ。僕はそれでいい。
あなたは、どうなのだろう?
あなたは誰に名前を憶えてほしい?
あなたは誰に名前を呼んでほしい?
あなたは誰に名前を忘れてほしい?