愛しい君へ 相野零次
君に手が届かないことがわかっていたら、奪おうなんて最初から思わなかった。明日と同じように、風と同じように。
君を恨んで死ぬとしても、僕にとっては日が沈みまた昇る繰り返しと何ら変わりはしない。
ある日、ふと君がいなくなり、僕は途方に暮れた。いつまでも一緒だなんて約束しちゃいないけど、いつまでも一緒にいてくれるって、勝手に君のことをかけがえのない存在だと決めつけていた。
春が来て、夏が終わり、秋が過ぎ去って、冬が訪れる。季節の移り変わりと同じように、僕の心も移ろっていく。だから寂しくない。
いや、本当のことを言うよ。君をこの手で殺したかった。
永遠に僕のものにしたかった。君はそのことに気づいていた。だからぎりぎりまで僕の傍にいてくれた。そんな君のことがたまらなく好きだった。
これから僕は僕自身の命を奪いにいく。ありったけの屈辱を上塗りして、怒りを持った二本の手の思うままに、僕は僕をめちゃくちゃにするだろう。
恐ろしい。
けれど、怖くはない。矛盾するけど、それが真実。
僕は生まれ変わるんだ。そして、君に会いに行く。
今度は恋じゃない、ちゃんと愛を形にして、君に渡すために。