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スレッドNo.454

風の通り道  Osada


ケーンと
雉はひと声鳴いて
蜜柑畑から飛び立ち
向こうの丘の藪に降りて
灰褐色の翼をたたんだ

空は丘に別れを告げるように
ずっと遠くまで青く
夏の終わりの太陽の下
無花果の樹と萱の茂みの間の
涼しい風の通り道に
立っていたのは誰だったのか

蜜柑畑で過労で倒れても
木陰で休んで何でもないと笑い
また働いた父だったのか

幼い私を見守りながら
額の汗を手甲で拭い
摘果作業をする母だったのか

電信柱の上に止まって
弁当を狙う烏に話し掛けながら
草取りをする祖母だったのか

あるいはまた
流れて行く白い雲を掴もうと
空に向かって手を伸ばす
幼い私だったのか

それから
幾つも
幾つも
幾つも年月は
過ぎて行ったけれど

ケーンと
雉はひと声鳴いて
蜜柑畑から飛び立つ

空は丘に別れを告げるように
ずっと遠くまで青く
みんなが行ってしまった国へ
白い雲が流れて行くから

私は今日もまた
涼しい風の通り道に立って
空に向かって思い切り
手を伸ばしてみる

編集・削除(編集済: 2022年08月21日 13:53)

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