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スレッドNo.4550

感想と評 9/6~9/9 ご投稿分 三浦志郎 9/16

1 上田一眞さん 「清人伯父のこと」 9/7

「やぁ 義姉さん/兄貴はどこですか?」―僕にとってのこの詩は、このセリフから始まったように思います。本来、深刻で困難なのにこの呼びかけです。一般論で言うと、次男さんはこういったハシハシした面や、すばしっこさやあっけらかんとした面があるようです。そんなことを思っていました。この脱出行もこの天真爛漫さが成功に導いた、そんな気がしています。系図を考え地図を確認しながら読んでいました。ある意味、それらもこの詩の醍醐味なのです。脱出行の様子は微に入り細に及び、記述として申し分ないように思われます。結果、小説や映画に接するような気分になります。手に汗握るものがあります。大佳作、としたいところですが、この作品は多少問題を抱えているように思います。

A……1、2連と最終連―つまり一眞さんと清人さんの行きがかりの件です。この話の行方がない。
ぷっつり切れて全くわからないのです。本作を単独作とするならば、又、プライベートに属するもので、これ以上語らないならば、この件は全く要らない。削除すべきです。脱出行のみに見合ったイントロを振るべきです。ただ清人氏はこの作ではキーパーソンなので、慎重・丁寧な扱いが必要ですね。

B……そうではなくて、これは連作予定作で、くだんの清人さんとの件も継続させるならば、次作以降で明かされるか?Bはあくまで僕の推測です。もしそうであるならば、この件は伏線のひとつとして本作でキープされていい。ただ、Bにも問題はあって、もし、そうであるならば、今度はタイトルが考慮の対象になりそうです。壮大な詩なので、総タイトルは別途、修辞的に高みに持って行って、「清人伯父のこと」は章タイトルに降ろすとか……。

A or Bの判断、それに伴う再加工を条件に暫定佳作と致します。

アフターアワーズ。
参考までに。 過去にこのサイトで連作はたまにありました。最近はないですね。僕も本にした分は全て此処で連作(連載?)しました。僕の場合、例えば1作品が5つの小詩予定として、5つ全部出来てから、日を決めて小出しにしてました。分野は違いますが、新聞や週刊誌の連載小説だと、その都度書くしかないのですが、僕の場合、その都度だと方向がブレたり、行き当たりばったり、
支離滅裂になりそうなので、そのようにしてました。


2 詩詠犬さん 「あさの そら」 9/7

物事の二面性、裏表を表すのは対象の周辺にあって、部分的に使うことが多いのですが、全篇、それで通したこの詩は珍しいケースと言えそうです。その分、賛否も出やすくなる気はするのです。当然、空にも多彩な表情があって、個人によって見方は違うし、一個人でも見方は各種変わるものです。この詩はまず空の多彩な表情・属性を洗い出して、二面軸の中で整頓してみせた、と言えそうです。少し気になるのは、大部分が空の形容ですが「だから あさのそらは」以降は自己の最終的意見・感想になります。形容と違って感想だとこの書き方だと―下世話な言い方ですいませんが―「じゃあ、どっちなの?」といった読み手もいるかもしれない。ここはそういったことは避けたいので、たとえば―。

あさのそらの表情は 多彩で
時に違って見える時もある
わたしの気分に合わせて
見せてくれる
そんなそらが
やはり すきだ        (あくまで参考例です)

要は最後は予定調和的に着地するのが良いのではないか といった示唆です。 佳作一歩前で。


3 荒木章太郎さん 「空白の街」 9/7

タイトル、一発で好きになりましたね!―して、中身は? 
シャッターがキーワード。最近、閉店・閉鎖している小売店など不景気な商店街をよく「シャッター街」と呼ばれますが、タイトルと共に、そんなイメージがまず浮かびました。9行目と終行が、その傍証のように思えました。そんな環境+自己の内面を感じて読んでいました。2番目のシャッターのみがカメラ関連のようです。(後に来る監視カメラと呼応するかも?)

「シャッターを開けなければ、生きられない」―その通りです、しかし―
「ヒソヒソと、人が遠ざかっていく」 このあたりに苦悩は存在するのでしょう。
いつも通り想像力が飛び交っていますが、僕なりに受け取るものがあったのです。佳作。


4 秋乃 夕陽さん 「鴉」 9/7

大変申し訳ないのですが、この詩の成立の背景とか製作意図がちょっと掴めなかったのです。
2連まで読むと、餌にありつけなかった、アホでかわいそうな鴉と読めます。本来、鴉は抜け目ない鳥ですし、例えば二羽で餌を争って負けちゃった、そんなわけでもないですし―。あと3連。プチトマトをあげてもよかった。なぜ衝動を抑えたんだろ?そんな疑問も残るわけです。もう少し何がしかの意図を盛り込んでほしい気はするのです。それには、この倍以上のスペースが必要になりそうです。「あ、そうですか」で読み手を立ち去らせない。しっかりつかむ感覚とでも言いましょうか。佳作一歩前で。


5 じじいじじいさん 「へんなきもち」 9/8

え―と。全てひらがな篇と漢字混じり篇がありますが、これはいったい!?便宜上ひらがな篇で書きましょう。まずは登場人物二人の歳を考えていました。小学校5~6年か中学1年生。モチーフ年齢を少しあげたのが、この詩の特色だし目新しい点ですね。エピソードもそれに見合っています。
漢字篇のほうから「いつも無口で目立たない~」「わたしどうしたんだろう」をひらがな篇のほうへ移植してもいいかもしれない。
よりくっきりするかもしれない。ビックリ感と、もやもや不思議感がこの場面の気分をよく表しています。ホント、どうしたんでしょうね?思春期の入り口に立って、この詩価値あり。甘め佳作を。


6 温泉郷さん 「縄文の足型」 9/8

この詩はちょっと辛い部分があって、殊に1,2連あたりは、調べて写真で見てみないと「えっ、どういうこと?どんなしくみ?」と戸惑う読み手はいそうです。僕もどうも釈然としなかったのです。簡単に言うと、死んだ子供の足型を粘土の板のようなものに写し取ったもののようです。2連目の「紐を通す小さな穴」は紐で、その粘土板を吊るして死者を偲んだようです。親も死ぬと一緒に葬られたようです。ただ謎なのは、この風習が函館・石狩地区に限られているそうです。
―ここまでが調べた結果です。思うに、生まれて間もない子どもは弱く、医療の思想も場所もない時代に多くは死んでしまったのでしょう。その事がこの詩の骨子になると言っていいでしょう。詩は現代と4000年前を共に考えることで進んでいきます。子への思いは時を越えて共通のものがあります。詩にもそう書かれています。ただ縄文の昔は、“ただなす術もなく”死なせてしまった、その悲しみでしょうね。そこが現代とは違う。4連の「~できない」に、それを感じました。
この詩の為のアドバイスとしては、1,2連の読み手の理解を促進すべく注釈をつけるといいでしょうね。今の僕だと、2マスほど下げて散文で書いちゃいますね。そういったパーツは説明調になることを厭わないことでしょうね。レベル高の為、一歩前で。


7 松本福広さん 「僕の名前をご存じですか?」 9/8

これは面白い! 調べた結果、名前がわかりましたが、ここで書いてしまうのは粋ではないでしょう。 書きません(笑)。
業界用語で「ニッチ」というのがありますが、市場の「隙間」を狙っていく戦略ですが、この詩も“詩のモチーフ業界”の隙間を上手く狙ったものでしょう。
1連の終わり4行はすこぶる貴重です。「あるある!」と同時に、ふと忘れていたことに気づかされます。この道具を出した詩の精神にも通底しています。5連以降の謙虚と優しさは貴重。最後の一句が凄くいいです。逆に4連の、その他用途は”調べもの“に準拠し過ぎ?甘め佳作を。

アフターアワーズ。
初連最後4行に関連して。「なあ、JOE。それは〇〇〇〇さ」などと、外国人は誰と話してるか、わかりきってるのに名前を言うのが、日本人よりも多い気がします。日本人の曖昧さ、外国人の具体性でしょうか。


8 相野零次さん 「愛しい君へ」 9/8

これは二通りの解釈があって、ひとつは生身の人間への思いを高踏的に書いたもの。もうひとつは人間ではない無形の対象―例えば神とかー。後者を僕が考えたのは、以前のコメントに「神については書き続けていく」といったものがあったからなんです。僕の中では前者:後者=4割:6割みたいな感覚です。たとえば「偶像崇拝」といった言葉も脳裏にちらついたんですが、神として代表されるキリスト、その教えでは偶像崇拝は禁じられているんです。ここで僕は袋小路に陥るわけです。前者にしても、もう少し具体に降りて来てもいいように思うんですが。―といったわけで結論はつきませんでした。従いまして、評価は保留とさせて頂きます。


9 静間安夫さん 「虫たちとわたし」 9/9

いやあ、虫の勉強をさせて頂きました。やはり読みどころは、カマキリとバッタの件で父に諭されたこと、その父が事故に遭ったくだりです。ただ読み手としては「わたしが無力な小さな虫に対してしたことと、父を見舞った災難が関係ない、とはどうしても思えなかったのである」のくだりです。
ここは読み手はたぶん(そうかな?)とか思ったりするんです。ただ書きの主導権は作者にあるので、ここは静観します。と同時に、僕は以降の詩行にその因果関係を見出したい。
すると、ありました、ありました。劇作家の名セリフです。バッタがカマキリに喰われたのも、大局からみれば運命、神の摂理。父上の交通事故も神の仕業。繋がりました。読み応えがありました。佳作を。

アフターアワーズ。
良い趣味をお持ちです。


評のおわりに。

静間さんに触発されてオオスカシバを調べ、その姿を鑑賞(?)しました。なんか可愛い!
僕は飛ぶものはたいてい好きです。僕はトンボが好きです(特にギンヤンマ)。井嶋さんも
トンボが好きです(蝉と共に)。 では、また。

編集・削除(編集済: 2024年09月16日 20:13)

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