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スレッドNo.4568

不調法 津田古星

「いろいろ考えたけど断ろうと思う。
あなたが言ってくれたことに
長い間こたえることが出来なかった。」と
主文を先に言われてしまったから
理由を聞く精神状態になく
席を立ってしまった
酷な答えを言うのなら 
もう少し気遣いを見せてくれてもよかったのに
それを望むのは無理なことだった

ずっと後になって 考えてはくれたんだ
いろいろって何を考えたんだろうと
思いを巡らせてみたけれど 分かるわけもなく 
きっと自分の都合を考えたのだと結論づけた
いろいろの中に私の気持ちを
想像することは入っていなかった
それを望むのも無理なことだった
私は彼への想いを
何分の一も伝えてはいなかったのだから

今思えば それで良かった
たとえ彼が私の想いを理解していた上での
結論であったとしても
感情に引きずられなかったのなら
その選択は正しかったし
彼には二十四歳の彼なりの葛藤があった

「こたえること」とは
答えるか応えるか
どちらにしても
そこに潔さはなかったから
私は席を立つ前に
感情的になって彼の優柔不断を詰った
私の放った矢は
彼の虚飾と保身の鎧を貫いて
プライドを傷つけた
海外出張と残業の合間に決断を迫り
申し訳なかったと後悔して
彼の驚いた顔と疲れた姿が心を去らなかった
いつか謝りたい
真っ直ぐ向き合ってくれた友情に
ありがとうと言いたいと思っていたが
それも二十四歳の私には綺麗事すぎた
だからあれもあれで良かった
いつも静かに話を聞くだけの私にも
真っ当な怒りがあったことを
彼は知っただろう
その怒りは想いの深さだったことに
彼は気づいただろうか

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