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スレッドNo.4574

神様と悪魔と僕  相野零次

 僕は愛を信じない。裏切りこそが真実だ。
 昨日切った手首の傷跡がズキズキと痛む。
 
 泥のような眠りだけが僕にやすらぎをくれる。
 睡眠薬をありったけ飲んで、ビールで流し込もう。
 
 不謹慎な僕の想像力。人類全てを敵に回してしまえ。
 台所の包丁で武装したら、血祭りショウの始まりだ。

 神は僕に何を与えたのか、何も与えなかったのか。
 僕は泣いているのか、哭いて生きるのか。

 玄関の扉を開ける、太陽がぎらぎら眩しい。
 背中の扉がきしんで閉まる。もう後戻りできないぞ、と。

 僕は走り出す。手当たり次第に切りつける。
 悲鳴が聴こえる。どこか遠くに僕がいて、ここにいる僕は別の人間みたいだ。

 不気味な笑い声が聴こえる、悪魔がわらっている。
 僕は悪魔に手足を操られている。だから僕が悪いんじゃない。
 悪いのは誰だ?

 神様の声が聴こえる。神様は嘆いている。
 悪魔の手先になった僕を憐れんでいる。

 一日が終わろうとしている、とても長く短い一日が。
 何人のヒトを殺 したのだろう。数えきれない。
 
 僕は裁きを受け、罰を受けるだろう。死 刑という罰を。
 そうか、僕は死 にたかった。だからヒトを殺 した。
 ヒトを殺 すことで、僕を殺 して欲しかった。

 死 にたいということは、生きたいという意味ではないだろうか。
 僕はもっとヒトと関わって生きたいのではなかろうか。
 
 深層心理を知るためのテストを、病院で僕は受ける。
 僕は実験台にされる。テストの結果によって、行先が決まるのだろうか。

 僕はどこへ行くのだろう。不安だ。不安が嫌な想像を加速させる。
 僕は何人でも殺 すだろう、ヒトを、自分を。
 そうして何度でもやり直すだろう、人生を。

 今夜も薬を飲んで眠る。効いているのかいないのか? よくわからない。
 でも飲まないと、僕はまたおかしくなるかもしれない。
 病院は退屈だから嫌だ。お金もかかるから嫌だ。心配をかけるから嫌だ。

 嫌なことばかりが僕の人生の大半を占めている。辛い。
 僕が好きなのは歌うことだ。
 
 歌をうたうと嫌なことも忘れられるし、録音して後から聞くと、悪いところも良いところもはっきりして、清々しい。
 
 だから僕は歌う、例え一人でも。
 そうして世界と戦っているのかもしれない。
 良いところと悪いところが人生にはあって、どちらが上にくるのか、毎日、秤にかけて比べている。
 神様と悪魔が戦っていて、僕はそのどちらかに属している。

 今日、僕は裏切者だった。だからたくさんヒトを殺した。
 明日は、できればヒトを救いたい。
 明日は、神様のしもべになりたい。

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