水浴び 秋乃 夕陽
昼前の日差しはまだ苛烈に地上を照らし続け
ひとの肌を焦げ付けてやまない
熱波で急激に上がる体温を持て余し
真っ赤に火照る顔に
滝のように止まることを知らぬ汗
裏腹に農協主催のレクリエーション農園で
朝早くから職員が何度も
カラカラに乾き切った土を耕し直し
年金受給者たちがタネを撒いたばかりの畑は
地下水から汲み上げられた水飛沫を浴びて
気持ちよさそうだ
きっと耕しても耕しても
石のように硬くなりゴロゴロしていた土も
湿り気を帯びて柔らかくほぐされただろう
一方でホースを持ち上げ放水する職員は
交互に上げ下げさせて水の輪を作っている
まるで翻弄されそうな体を必死に堪えながら
「こんにちは〜――」
時間外に畑の様子を見に唐突に現れた客
しかめ面しながら畑から戻って来た職員の眼鏡は
レンズにいくつも小さな水玉模様を作り出していた